計画研究
オートファジーは細胞内の主要な分解系であり、Atgタンパク質群が互いに協力して働くことで引き起こされるが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究ではAtgタンパク質群の立体構造を明らかにすることで、オートファジーの未解決課題解明に向けた構造基盤を作ることを目的としている。本年度は新たに高速原子間力顕微鏡法を導入し、Atg13がひも状のやわらかい構造を持つことを明らかにした。さらに機能解析を進めることで、Atg1複合体がひも状のAtg13により互いに繋がれることで、高次会合体を形成すること、その結果オートファジーが生じる場が形成され、オートファゴソームの最初の膜材料と考えられているAtg9小胞のリクルートが進むこと、またオートファジーの進行に重要なAtg1のキナーゼ活性が上昇することを明らかにした。以上の知見はオートファジーの初期過程に関する重要な進展であり、論文として報告した。オートファジーの選択的積荷であるApe1に関して、単独あるいはアダプター因子Atg19との複合体として昨年度決定した立体構造に基づき、生化学的・細胞生物学的解析を進めた結果、Ape1は12量体を形成したのち自身のプロペプチド部分で3量体を形成することで凝集すること、Atg19はApe1凝集体の表面選択的に結合すること、さらにAtg19はApe1凝集体の成長を抑えることで凝集体をオートファジーの積荷となるのに適したサイズに制御していることを明らかにした。これはアダプター因子に関する新しい機能の発見であり、論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では酵母の主要Atg因子群、様々な選択的基質認識に関わるアダプター因子群、そして哺乳類オートファジーを制御する因子群の構造解析を行い、オートファゴソーム形成機構や選択的基質認識機構など、オートファジーの未解決課題解明に向けて構造基盤を確立することを目指している。本年度は酵母の主要Atg因子群が集合して形成するプレオートファゴソーム構造体の形成機構をAtg13を中心とした構造機能解析で明らかにした。さらに液胞酵素の選択的オートファジーに関わるアダプター因子Atg19が基質の認識だけでなく、基質(凝集体)のサイズをオートファジーに適した大きさに制御していることを示した。さらに膜蛋白質Atg9および巨大蛋白質Atg2の大量調製系の確立に成功するなど、順調に進展している。
酵母の主要Atg因子群に関しては、6回膜貫通型蛋白質であるAtg9、ホスファチジルイノシトール3キナーゼの構成因子であるAtg6-Atg14複合体、そして巨大蛋白質Atg2の結晶化および結晶が得られた場合は結晶構造解析を進める。並行してこれら因子群のクライオ電子顕微鏡や高速原子間力顕微鏡を用いた構造解析も進める。高等生物固有の因子であるFIP200の結晶化および構造解析も進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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