計画研究
オートファゴソーム形成の研究については、これまで遺伝学的相互関係が主に解析されてきたAtg因子群の相互関連について、時空間的相互作用を明らかにした。その結果、上流因子であるULK1複合体と下流因子のATG5の挙動がきわめて類似していること、およびVMP1陽性の恒常的構造体からオートファゴソームが形成されることが判明した。一方、これらのATG因子を含むタンパク質の合成が飢餓誘導のオートファジーに必要であるという説が以前からあったが、タンパク質翻訳阻害剤等を用いた研究から、少なくても短時間飢餓によるオートファジーには新規タンパク質合成は不要であることを明らかにした。一方、オートファゴソームとリソソームの融合過程に必要な繋留因子として、HOPSを同定した。HOPSはすでにリソソームとエンドソームの融合に必要であることが知られているが、HOPSはオートファゴソームのSNAREであるシンタキシン17と直接結合することで、オートファジーにも関与することを明らかにした。マウスを用いたオートファジーの生理・病態生理学的研究においては、ATG13ノックアウトマウスが心血管系の異常を呈することを明らかにし、これはATG13がオートファジー非依存的な作用をもつことを示唆した。マウス受精卵で誘導されるオートファジーを生細胞のままモニターする実験系を構築して、オートファジーの活性とその後の胚発生能が相関することを明らかにした。SENDA病モデルマウスとしてのWIPI4ノックアウトマウスも繁殖・解析を開始した。また水晶体細胞内でのオルガネラ分解を実時間で解析できるex vivo可視化系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
予定されていたATG因子の時空間的解析と、オートファゴソームとリソソームの融合に必要な繋留因子の同定と解析はいずれも論文発表に至った。これらの他に原著論文5編、英文総説2編を発表した。その他の項目についても、順調に研究や準備が進捗しており、次年度の論文発表が見込まれる。中国からのSENDA病モデルマウス(WIPI4ノックアウトマウス)の輸入が不能となり、米国から輸入することに切り替えた。またES細胞の輸入にも遅れが生じた。その結果、当初の計画より約半年遅れたが、マウス、ES細胞ともに必要なものは入手され、順調に繁殖・解析を開始することができている。大学院生などの若手の参画も多く、研究者育成の観点でも良好に推移していると考えている。
細胞生物学的研究では、複数のATG欠損細胞の電子顕微鏡解析によってオートファジー膜動態における個々のATG因子の機能を明らかにするとともに、オートファゴソーム形成部位に蓄積するATGタンパク質以外の分子を同定し、この部位の特徴付けを行う。さらに、特異的基質がこの部位に集積するメカニズムについて解析を進める。また、オートファゴソームとリソソームの融合については、必要な分子がそろいつつあるため、それらを指標として用いることで、融合のキネティクスの解析や、融合因子の獲得機構の解析へと進める。マウスを用いた生理・病態生理的意義の研究では、すでに解析中である精子特異的ATG5ノックアウトマウス、ATG13ノックアウトマウス等のモデルにおいて、オートファジー依存的および非依存的異常を特定して解析を進める。ヒト神経変性疾患SENDAの解析と、水晶体内の新規オートファジーの解析には、マウスモデルに加えてより短時間で解析が可能となるゼブラフィッシュモデルも加えて研究のスピードアップを図る。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (34件) (うち招待講演 15件) 備考 (1件)
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