計画研究
本研究グループでは、これまでにオートファゴソームとリソソームの融合過程に必要なSNARE因子としてシンタキシン17を同定した。今回、シンタキシン17に結合する因子を探索した結果、リソソームとエンドソームの融合に必要であることが知られている繋留因子HOPS複合体がシンタキシン17とも結合することを見いだし、それがオートファゴソームとリソソームとの融合に必要であることを明らかにした。オートファゴソーム形成に関わるATG因子群については、これまで遺伝学的相互関係が主に調べられてきたが、これらの因子が具体的にどのような膜動態を制御しているかは明らかではなかった。そこで、今回、代表的なATG因子のノックアウトおよびノックダウン細胞の電子顕微鏡を用いた超微細構造解析を行い、各ATG因子または複合体が機能するオートファゴソーム形成ステップを特定した。また、同時にオートファジー選択的基質としてフェリチンを特定した。またCRISPR/Cas9法を用いて、ATG13ノックアウトマウス、ATG101ノックアウトマウスを作製した。常法に従いATG13ノックアウトマウスは速やかに作製できたが、ATG101マウス作製に難航した。導入遺伝子量を検討・変更するなどして作製に成功した。この間約7ヶ月当初の計画が遅延したが、その後は順調に繁殖解析へ移行した。その他、受精後に誘導されるオートファジーがmTOR非依存的であることなどを明らかにした。また、受精直後のオートファジーによる選択的分解の可能性を解析するため、精子由来のミトコンドリアや卵細胞質の脂肪滴を可視化するためのモニター系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
予定されていたオートファゴソーム膜構築における各ATG因子の機能解析、オートファゴソームとリソソームの融合に関わる繋留因子の同定は論文発表に至った。ATGノックアウトマウスに関する研究についても、ATG13マウス作出に成功し、WIPI4遺伝子、ATG5遺伝子に関しても各種ノックアウトマウスの解析が順調に進んでいる。ATG101については作製に検討を要したが、約7ヶ月遅れて当初の予定のステップを完了することができている。また、オートファゴソーム形成部位の脂質・脂質合成酵素蓄積の解析、シンタキシン17の膜挿入機構の解析については興味深い予備データが得られている。合計して、原著論文6編、英文総説2編、和文総説4編を発表した。大学院生・学部学生などの若手の参画も多く、研究者育成も順調に進んでいる。
本年度までの解析で、オートファゴソーム形成と融合過程の基盤情報は整いつつあると言える。また新しいマウスモデルの作出も進んでいる。そこで、次年度以降は、初期ATG因子の構造と機能、オートファゴソーム形成部位と精製された構造体の成分、融合因子の生化学的特性とオートファゴソームへのリクルート機構、新規定量法の開発とその応用、生体内での各ATG因子の個別機能、精子および水晶体形成過程でのオートファジーおよび細胞内分解系の意義、ヒト神経変性疾患SENDAの細胞・動物モデルなどの解析を中心に研究を進めていく予定である。研究体制には大きな変化はない。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 7件、 招待講演 16件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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