計画研究
本研究課題では、モデル動物を用いたオートファジーの生理学的解析と、その基盤となる分子機構の解析を行っている。平成27年度は、生理機能の解析としては、ATG13の遺伝子欠損マウスの解析を行った。ATG13はULK、FIP200、ATG101とともに複合体を形成して、オートファゴソーム形成の始動を制御する因子である。Atg13ノックアウトマウスは胎生致死となり、心筋の発達異常がその原因と考えられた。ATG13と共同して機能するFIP200のノックアウトマウスも胎児期に死亡するが、他の多くのATG遺伝子ノックアウトマウスは出生直後に死亡するため、Atg13-FIP200がもつ非オートファジー機能が心臓発生に寄与している可能性が考えられた。また中国Hong Zhang博士と共同でヒトSENDA病のモデルとしてWIPI4/WDR45ノックアウトマウスを作製・解析し、これらがオートファジー基質の蓄積とともに学習障害、運動障害を呈することを明らかとした。また、受精によって誘導される脂肪滴の選択的分解とオートファジーとの関連について解析した。一方、分子機構の解析はオートファジー始動複合体を中心に行った。計画研究の野田展生グループと共同で、複合体サブユニットのATG101-ATG13複合体の立体構造をX線結晶構造解析法により決定した。その結果、Atg101はAtg13のN末端領域と同様にHORMAドメイン構造を持ちAtg13とHORMA-HORMA複合体を形成すること、その反対面に特徴的なWFフィンガーをもち下流のATG因子の集積に重要であることを明らかにした。さらに、ULK1とATG13の結合の意義を解析した。
2: おおむね順調に進展している
予定されていたオートファジー関連モデル動物の作出と解析、オートファジー始動因子を中心とした分子機構の解析は順調に進んだ。ATG13ノックアウトマウス、WIPI4ノックアウトマウス、ATG101-ATG13複合体の構造解析などは論文発表に至った。その他のATGノックアウトマウスに関する研究についても、ATG101、VMP1ノックアウトマウス作出などが順調に進んでいる。STX17についてはES細胞からの作出に難航したが、方法を変更することで、約9ヶ月遅れて当初の予定のステップを完了することができている。合計して、原著論文6編、英文総説4編、和文総説1編を発表した。大学院生・学部学生などの若手の参画も多く、研究者育成も順調に進んでいる。
後半期は、さらに発展的な内容の研究を推進する。メカニズムの研究としては、オートファゴソーム形成部位の解析、オートファゴソーム形成因子の機能解析、オートファゴソームおよび前駆体の精製と解析、オートファゴソームとリソソームの融合機構の解析、新しいタイプのオートファジーとしての水晶体細胞での小器官分解の解析等を行う。また、重要なプロジェクトとして、オートファジー定量系の構築と新規制御因子探索を行う予定である。一方、個体レベルでの生理・病態生理的意義の研究として、初期因子VMP1、FIP200、ATG101ノックアウトマウスの解析、脳を除く全身性ATG5KOマウス、各種ATGノックアウトゼブラフィッシュを樹立・解析を行う。疾患との関係としては、ヒト神経変性疾患SENDA原因因子WIPI4を欠損したゼブラフィッシュおよびマウスの解析をさらに進める。研究体制には大きな変化はない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 9件、 招待講演 20件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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