計画研究
当グループはA02: オートファジーの生理・病態において、パーキンソン病(PD)分子病態の解明とそれに基づくオートファジー・マイトファジー調節化合物の同定を目指し、下記の研究を進めた。1) PD黒質神経細胞死へのオートファジーの関与: 研究分担者佐藤は黒質神経細胞特異的Atg7ノックアウトマウスを作製し、病態解析を進めた。同マウスはコントロールに比し寿命が短く、黒質神経細胞・青斑核にp62陽性・ユビキチン陽性の細胞質内封入体を認めた。同マウスの行動解析を平成27年度に進める予定である。2) PINK1/parkin介在性マイトファジー特異的化合物の探索・同定: 当初はparkin-KeimaをTet-onシステムを用いて安定発現させたHeLa細胞を用いたスクリーニングを予定していたが、keimaリーク発現が高度で同蛋白蓄積の毒性を回避できないため、GFP-LC3安定発現HeLa細胞を用いてオートファジー促進薬を同定し、その中から2ndスクリーニングとしてマイトファジー促進作用を持つものを探索している。既に新たなオートファジー促進剤を26同定した。また、新たな家族性PD原因遺伝子CHCHD2を同定し(Lancet Neurol 2015)、同遺伝子産物によるマイトファジー調節機構について検討している。3) オートリソソーム形成特異的に作用する化合物の薬効評価: 連携研究者井本正哉が特定した化合物SO286の結合タンパクを同定し、結合部位の特定並びに構造活性相関の検証を行った。現在論文投稿準備を進めている。また、SENDA原因遺伝子WDR45の遺伝子変異頻度を我が国の同様表現型症例群で評価し、女性のみにおいて25%の頻度でWDR45遺伝子変異を認めることを報告した(Neurobiol Aging 2015)
2: おおむね順調に進展している
当初の3つのプロジェクトは概ね順調に推移しており、3年目には全プロジェクトとも初報の投稿が可能な状況となっている。具体的には1) 黒質特異的PDモデルマウスによるヒト黒質病変の再現に関する報告2) 新たなオートファジー促進かつマイトファジー促進作用を持つ化合物についての報告3) 新規作用機序を持つ新たなオートリソソーム産生促進化合物についての報告以上である。これらに加え、オートファジーと神経変性疾患病態との関与を臨床サンプル(ゲノムDNA、RNA、血漿、血清)を用いて進めており、2つの報告を行った。
3-5年目は上記1)-3)のプロジェクトを進めるとともに下記の4)-5)の研究プロジェクトをさらに並行して行い、PD病態におけるオートファジーの役割を解明するとともに、新たな作用点の小分子化合物同定を図る。1) 生体内小分子化合物による神経細胞特異的オートファジー誘導機構の解明近年Guido Kroemerらのグループにより細胞内代謝産物(小分子化合物)によるオートファジーの調節機構が注目されている。特にKroemerらはAcCoAが重要な調節因子としており、同事象を確認すべく、PDモデル細胞・PD患者血漿において小分子化合物の網羅的検索を行ったところ、幾つかのオートファジー調節因子を同定した。同化合物の分子メカニズムを検討し、PD病態との関連検討を進める。2) 新たなるマイトファジー調節蛋白の機能解明当グループでは、ミトコンドリア膜電位低下時にparkinとともにミトコンドリア膜上に一時的に誘導される新たなタンパク質を同定した。同蛋白の機能をライブセルイメージングなどを用いて解析し、新たなるマイトファジー調節機構の解明を進める。
すべて 2016 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)
J Neurol Neurosurg Psychiatry
巻: 87 ページ: 295-301
doi: 10.1136/jnnp-2014-309676
Neurobiology of Aging
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.neurobiolaging.2015.01.020
Lancet Neurology
巻: 14 ページ: 274-282
10.1016/S1474-4422(14)70266-2
http://www.juntendo-neurology.com/pdf/kenkyu-saeki-furuya.pdf