計画研究
平成27年度は下記の研究を実施し成果を得た。1) 既存薬からオートファジー調節化合物を同定し、作用機序を解明する研究: 本研究では現在も広く使用される抗結核薬エタンブトールがリソソーム中性化・リソソーム亜鉛貯留を介して、リソソーム機能不全が生じ、オートファジー不全状態が招来されることを証明し報告した。本成果はエタンブトールの深刻な副作用である視神経障害・肝機能障害の分子メカニズムに関与する可能性が示唆された。さらにエストロゲンレセプター拮抗薬として臨床応用されているクロミフェンが、akt/mTORC1経路の阻害を介してオートファジーを誘導するが、リソソーム酸性化阻害作用を併せ持つことを確認した。総和としてはオートファジー誘導作用を持つと判断され、血液脳関門を通過する特性から、創薬シーズへの可能性が残されていると判断している。2) パーキンソン病原因遺伝子産物VPS34についての研究: 遺伝性パーキンソン病責任遺伝子産物VPS34の分子機能として構成するレトロマーの分解調節機構を解明し、報告した。3) パーキンソン病患者における内因性オートファジー調節物質の同定: パーキンソン病患者血漿にて特異的に上昇し、オートファジー調節効果を持つ小分子化合物群を3種類同定した。現在詳細な作用機序を解明している。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究項目の基礎データを順調に積み重ねており、2016年度には全ての項目において論文投稿が出来る見込みとなっているため。
1) マイトファジー調節化合物の同定について: マイトファジー特異的化合物を直接的にスクリーニングする系の樹立は困難であるため、オートファジー調節機能を持つ化合物の中から、よりPINK1/parkin介在性マイトファジー誘導作用を持つ化合物の同定を進める方針に変更する。2) パーキンソン病患者由来iPS細胞由来神経細胞を積極的に薬効評価に用いる。3) in vivoオートファジー誘導効果評価モデルとして、ハンチントン病モデルマウスをより拡充して使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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