研究領域 | 生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御 |
研究課題/領域番号 |
25112002
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
相賀 裕美子 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (50221271)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / 性分化 / Nanos2 |
研究実績の概要 |
生殖細胞の性分化に関わる制御機構を解明するために、雄の生殖細胞において、必須なNanso2の上流と下流に関する研究を進めている。上流に関連してはNanso2を雄性分化のマーカーとすることにより、雌の生殖細胞で雄性分化を誘導する条件が2つの因子によって制御できることがわかった。すなわち雌の卵巣内でも生殖細胞のみを雄性分化にむかわせることが人為的に可能であることが、明らかになった。
ひとたびNanos2が誘導されれば、雄性分化に向かわせることが可能であることはすでに過去の研究から明らかになっているが、その分子機構に関しては不明である。そこで雌細胞にNanos2を強制発現した細胞を解析するツールとしてEGFP-t2a-3xflag-Nanos2をRosa 遺伝子座にノックインしたマウスをCas9を用いた手法で作製することに成功した。過去に作製したマウスは通常のTGマウスであったため、Nanso2を発現した細胞を集めることは不可能であったが、今回は、EGFPを発現するとNanso2が発現するように工夫したため、セルソーターを用いてNanos2発現細胞のみを回収することが可能になった。この系が動くことを遺伝子発現、表現型の解析から確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は25年度中に終了するはずであったが、後半のTGマウスの作製に苦戦していた。通常のTGマウスも作成したがNanos2の強制発現を確認することができなかった。そこで繰越申請を行い、Rosa-locusにノックインする手法をとった。さらにCas9を用いたTGマウス作製法や、ES細胞を用いた方法を同時並行的に行った。その結果、Cas9を介した、受精卵への導入によりRosa遺伝子座へのノックインを確認することができた。このラインはEGFPを同時に発現するため、今後の解析に非常に有用である。時間はかかったが、目的は達成できたと考えている。
また前半に関しては、予想を超えた成果を得ており、研究は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
生殖細胞の性分化機構に関しては、雌化因子が明らかになったが、どのような機構で雌化を誘導しているのか、またそのシグナルがない場合に雄化する分子機構も不明である。今後はこれら2つの因子の作用機構を明らかにする必要がある。具体的には、卵子形成を誘導するために必須な因子、Smad4とStra8の標的を明らかにするため、マイクロアレイを用いた解析と標的遺伝子の機能解析を行う。またNanso2の下流解析のため、まず、発生過程の異なった時期の雌性生殖細胞にNanos2を強制発現して、最も性転換が高く誘導される時期を特定する。その実験系を用いて、雄化過程でどのような遺伝子あるいは、エピジェネティックな変化が誘導されるのかに関して、トランスクリプトーム及び遺伝子のエピゲノム変化を解析する予定である。これらの解析はすべて胎生期の生殖細胞が対象になるので、いかに少量のサンプルを用いて効率よく解析ができるかの工夫が必要になる。
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