研究領域 | 生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御 |
研究課題/領域番号 |
25112005
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 都暁 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30423396)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | エピゲノム / 生殖 / piRNA / DmGTSF1 / 遺伝子 |
研究概要 |
OSCを用いたRNAiスクリーニングによって、多くのpiRNA生合成因子を見いだした。一方で、この解析は多くのトランスポゾン抑制因子の発見にもつながった。例えば、HP1aや、DmGTSF1、Maelstromを機能阻害した結果、piRNA量に変動は認められないが、レトロトランスポゾンの発現が上昇する。そこで次にこれら因子群の個々の機能解明へと研究を展開した。 はじめにDmGTSF1の細胞内局在を検討した結果、Piwiと同様に核に局在する因子であることを明らかにした。更に、GTSF1がPiwi同様にエピジェネティックな制御を介してレトロトランスポゾンの発現抑制を担うか検討するため、ChIP-qPCR解析を行った結果、DmGTSF1、及びPiwiの機能阻害は共に、Polymerase IIのレトロトランスポゾン領域への相互作用を促進するとともに、抑制性エピジェネティックマークであるH3K9me3レベルの減少をもたらした。以上のことから、DmGTSF1はPiwi-piRNA経路上で働く因子であることが強く示唆された。次に直接的にDmGTSF1とPiwi-piRNA経路の関連性を検討するため、蛋白質間相互作用の有無を検討した。その結果、DmGTSF1はPiwiと蛋白質間相互作用することを見いだした。更に、DmGTSF1が持つCHHC-type Zn fingerモチーフに部位特異的変異を導入した結果、Zn fingerモチーフがレトロトランスポゾンの抑制に必須であることを明らかにした。OSCにてDmGTSF1をノックダウンしても、Piwiの核局在は影響を受けない。しかしながら、DmGTSF1をノックダウンした細胞ではRNAポリメラーゼIIのレトロトランスポゾン領域への結合が著しく低下したことを考え合わせると、DmGTSF1はPiwi-piRNA複合体の構成因子の一つとして機能し、レトロトランスポゾンの抑制に機能するというモデルが強く示唆された(Ohtani et al. Genes Dev 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Piwi-piRNA複合体が相互作用する蛋白質を探索した結果、CG3893蛋白質(本研究でDmGTSF1と命名)がPiwi-piRNA複合体と相互作用し、転写レベルのトランスポゾン抑制に必須であることを明らかにし、論文として発表した(Ohtani et al. Genes Dev 2013)。DmGTSF1に関しては論文として発表しているが、未だ機能解明が果たされていない制御因子群も見いだしている。従って、研究対象の絞り込みが既に行われたという点において、本研究は飛躍的に進むものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
DmGTSF1は、ショウジョウバエと脊椎動物でのみ保存された遺伝子であり、これらの生物種では酵母と異なったヘテロクロマチン化誘導機構が存在することが想定される。しかし、DmGTSF1 の分子機能の詳細は不明であるので、今後更にDmGTSF1の機能に迫っていく必要がある。特にDmGTSF1のZn-fingerドメインが相互作用する分子を同定することが重要であると考えられるため、直接結合するRNA分子をCross-Linking ImmunoPrecipitation(CLIP)法を駆使し同定するとともに、免疫沈降法による相互作用蛋白質の解明を行う予定である。更に、抑制段階に働く他の因子群も同定できたことから、構成因子の個々の役割解明が急務である。これら因子の機能解明を行うため、抗体の作製を順次行っていく。一方、piRNAは一本鎖のRNA分子であり、これがレトロトランスポゾン認識の配列情報として働くには、DNAとの塩基対形成、もしくは転写途上のRNAと塩基対を形成することで機能すると考えられる。そこで、現有する抗Piwi抗体を用いてPiwi-piRNAが直接結合するRNA分子をCLIP法で、直接結合するDNAをChIP法で検討し、Piwi-piRNA複合体が直接結合する核酸分子の同定を進める。しかし、現在のところ、ChIP、及び、CLIP法、双方において、相互作用核酸を検出することができていない。この理由を検討するため、実験条件の検討を進める必要性がある。
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