平成29年4月に情報・システム研究機構国立遺伝学研究所で自身の研究室を立ち上げた。これまでに助教2名から成る体制を構築し、本研究に必要な機器を揃えることによって、これまで所属していた研究室と同様の生化学的研究を実行できる体制を構築した。更に、生化学的研究に加えて、ハエ遺伝学を活用できる体制を整えた。新しい研究室において生化学的、遺伝学的解析を駆使することで、機能未知のレトロトランスポゾン抑制因子を1つ同定した。培養細胞OSCでこれをノックダウンするとレトロトランスポゾンの発現上昇が起こった。その上昇率はPiwiやHP1aのノックダウンとほぼ同等であり、レトロトランスポゾンの抑制にきわめて重要な因子であることが予測された。一方、体細胞系列の培養細胞S2においてもノックダウンを行ったが、レトロトランスポゾンの発現は変動しなかった。従って、細胞特異的にレトロトランスポゾンの抑制に働くことが示唆された。次に、piRNA経路との関連を検討するため、piRNA量をノザンブロット法で検討した。その結果、OSCでノックダウンしてもpiRNA量に変動が認められなかった。したがって、レトロトランスポゾンの抑制段階で機能している可能性が強く示唆された。更に分子機能に迫るため、特異的に結合するマウスモノクローナル抗体の作出を行うこととした。抗原をGST融合タンパク質として調整し、マウスへの免疫を開始した。今後、この新規レトロトランスポゾン抑制遺伝子の機能解明を進めることで更にエピゲノム形成の分子機構が解明されると期待する。
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