計画研究
前年度までに、転写活性化に関与する新規ヒストン修飾(ヒストンH2Bの112番目のセリンのGlcNAc化;H2B S112GlcNAc)が受精卵の雄性クロマチンに特異的に存在することを見出している。平成26年度は、受精卵におけるOGTとTet3の結合状態と胚性遺伝子の活性化に及ぼす影響について検討をおこなった。その結果、(1)OGTへの雌性クロマチンへの結合はStella(PGC7、Dppa3)により阻害されていること、(2)Tet3をノックダウンしてもOGTの雄性クロマチンへの結合およびH2B S112GlcNAc修飾状態に変化がないこと、(3)H2B S112A変異体を用いて受精卵に存在するH2B S112GlcNAc修飾を消去しても、Tet3のクロマチンへの局在および雄性クロマチンにおける5mCから5hmCへの変換に変化がないこと(4)受精卵においてTet3をノックダウンしても、H2B S112GlcNAc修飾を消去しても転写に影響はなかったが、Tet3をノックダウンした受精卵からH2B S112GlcNAc修飾を消去した場合には、雄性クロマチンからの転写が抑制されること、を明らかにした。これらのことから、受精卵ではES細胞の場合と異なり、OGTはTet3非依存的にクロマチンにリクルートされ、受精卵における雄性クロマチンからの転写には、5hmCとH2B S112GlcNAc修飾の両方が必須であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の研究計画に記載した実験をすべて行い、胚性遺伝子の活性化にはゲノムの脱メチル化と特異的なヒストン修飾の両方が必要であるという重要な知見を得ることができたため、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
平成27年度は、Tet3およびH2B S112GlcNAc修飾が胚性遺伝子の活性化に及ぼす影響を検討するために、これらのクロマチン修飾を欠損させた2細胞期胚における遺伝子発現を網羅的に解析する予定である。また、ES細胞に、申請者が同定している全能性細胞で特異的に発現する遺伝子群の制御化にEGFP等のレポーターを導入することにより、全能性細胞を可視化する系を構築する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (3件)
Biosci Biotechnol Biochem.
巻: 79 ページ: 292-299
10.1080/09168451.2014.968090. Epub 2014 Oct 10.
Nat Commun.
巻: 6 ページ: 6008
10.1038/ncomms7008
EMBO Rep
巻: 16 ページ: 582-589
10.15252/embr.201439427
Sci Rep
巻: 未定 ページ: 未定
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 453 ページ: 455-460
10.1016/j.bbrc.2014.09.101. Epub 2014 Oct 1.
http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/research/
http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/others/
http://b-lab.nagahama-i-bio.ac.jp/?page_id=203