計画研究
初期の着床前胚は、胚体と胚体外の両方に分化できる「全能性」と呼ばれる能力を有していることから、最初の分化が生じた胚盤胞期から樹立されたES細胞よりも優れた分化能を有している。しかし、初期の着床前胚は幹細胞ではないために、分化能を維持したまま増殖させることができない。本研究では、初期の着床前胚に特異的に発現する遺伝子群の機能解析を通じて、全能性の獲得と消失の分子機構を解明することを目的とする。本年度は、申請者らが同定した初期の着床前胚で特異的に発現するTrim61、Pramef12、Rfpl4、Zbed3、およびZc3h6のノックアウトマウスを作製した。この中でPramef12が精子形成不全により不妊になることが明らかになった。また、Pramef12は精巣では発現が認められないが、始原生殖細胞において発現していることを明らかにした。本年度は、ES細胞に含まれる全能性細胞の可視化についても検討を行った。現在までに、ES細胞に含まれる全能性細胞で発現することが報告されているMuERV-Lの発現制御下でtdTomatoを発現するES細胞の作製に成功している。また、この細胞を用いて、MuERV-L陽性細胞の割合を10倍以上増加させる培養条件を見出した。今後、培養条件をさらに検討するとともに、全能性細胞特異的遺伝子を強制発現させることにより、MuERV-L陽性細胞の割合をさらに増加させることができるかどうかについて検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
申請者らが同定した初期の着床前胚で特異的に発現する遺伝子、7個についてすべて特異的抗体とノックアウトマウスの作出に成功している。また、このうち3個についてはノックアウトマウスが不妊になることを確認している。このように、正常発生に必須の遺伝子を少なくとも3個は明らかにしており、当初の目的にしたがい順調に進展していると考えられる。
今後、Pramef12については、雄性不妊の原因を始原生殖細胞の解析を行うことにより明らかにする。また、Pramef12のメスのノックアウトの解析も行う。さらに、Trim61、Rfpl4、Zbed3、およびZc3h6については、メスのノックアウトマウスから得た受精卵が正常に発生できるかとうかを明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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