計画研究
『目的』エピゲノム編集システムの開発とそれを応用した受精とエピゲノム変化の解析を2つの大きな柱にして研究を進める。サブテーマを設けて目標を明確にし、連携研究者4人を配置することで、リスクの軽減と問題の早期発見・解決を可能にする。『実施概要』本研究では以下の2つを大きな柱にして研究を進めている。H27年度は、CRISPR/Cas9システムに注力して複雑なゲノム編集技術の開発を継続するとともに、精巣・卵巣・胎盤に特異的に発現する遺伝子のノックアウトマウスを作製して、受精とエピゲノム変化の解析を進めた。1)CRISPR/Cas技術を用いたゲノム編集技術の開発:受精卵へのsgRNA/Cas9発現プラスミドと鋳型ssODNの注入により、FLAG, V5, His6などのタグ挿入を行った。またPpp3ccなどの解析対象遺伝子の酵素活性ドメインのアミノ酸置換なども実施した。得られたマウスの解析から、Tagと目的タンパク質の相互作用により検出効率が著しくことなること、また1アミノ酸置換でも目的タンパク質の安定性が顕著に低下することなどが明らかとなった。2)受精とエピゲノム変化:これまでに作製した、精子形成不全や精子機能不全、受精障害などの不妊マウスを10系統以上について、表現型解析やメカニズム解析を進めた。H27年度は、卵子活性化に必須と考えられたPAWPが少なくともマウスでは不要であることを論文発表した。さらに精子カルシニューリン(PPP3CC/PPP3R2複合体)が、精子の中片部の屈曲性を制御していること、その阻害剤が男性避妊薬開発に繋がる可能性があることを示し、Science誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
精子形成、受精、卵子活性化に異常をきたすノックアウトマウスを多数、作製できており、今後は解析に注力することで、予定どおりの成果を挙げることができる。論文報告をいくつか達成できている点から、おおむね順調と判断した。なお精子カルシニューリンが精子の成熟に必須であり、その阻害薬が男性避妊薬の開発に繋がることをScience誌に報告できたことは特筆できる。
単純な遺伝子破壊と異なり、点変異やノックインなどの複雑な遺伝子改変を受精卵で行うことは難しい。そこでタグ挿入などは、処理数を増やすことのできるES細胞を活用するとともに、ES細胞の利点を活かしてキメラ動物での解析などを取り入れる。また精子カルシニューリンのように、男性避妊薬の標的となりえるものについては、共同研究などにより創薬の可能性を検討する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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