研究実績の概要 |
研究項目1 花成のタイミングを決める代謝基盤については、重要な無機栄養環境であるカリウムに応答して、重金属結合蛋白質NaKR1がmiR156とSPL3転写因子を介してFT遺伝子の転写制御に関わることを明らかにした論文を公表した。フロリゲン(FT蛋白質)の輸送過程の時間的な側面と輸送に関わるアミノ酸残基の同定についても論文を公表した。フロリゲン複合体形成における14-3-3蛋白質の役割については、花成促進における転写制御を介した寄与とフロリゲン複合体形成を介した寄与を分けて解析する必要があることがわかり、研究を継続する。 研究項目2 (1) 環境に応答した生殖器官の形成誘導:これまでの知見からmiR529cの制御を受けるMpSPL2が、適切な環境シグナル(日長・光質)がない場合に生殖器官の形成を抑制しているという仮説の検証をおこなった。共著論文が現在改定中である。(3) 生殖器官分化・配偶子形成(造精器と精細胞):国際共同研究により解析を進めてきた転写因子MpDUO1とMpMID/MpRWP2については、論文を投稿し、その審査結果を踏まえて、MpRKDとの制御関係に関する知見やシャジクモ植物のDUO1の解析結果を加えて、再度投稿する準備を進めている。MpMS1については雄性および雌性の生殖系列の確立ないしは維持に関わることが明らかになった。MpDUO1の下流で雄性配偶子(精子)形成に関わるMpDAZとMpRWP1、精子核凝縮におけるヒストンH1様蛋白質2種とプロタミン様蛋白質の役割についても機能欠損変異体の表現型解析を進めた。MpRWP1がH1L1, H1L2, PRMの発現制御を介して精子核凝縮に関わる可能性が示唆された。(3)胚発生と胞子体形成・胞子形成:MpMS1が胞原組織で発現することを明らかにした。被子植物のタペート細胞に当たる弾糸細胞特異的な発現は見られなかった。
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