計画研究
本研究においては、植物の師部構成要素、内鞘細胞、及び根冠の細胞の分化を制御する鍵転写因子を同定することが大きな目標である。また、それらの転写因子により制御される遺伝子の解明も目標としている。昨年度に引き続き、細胞タイプ別のトランスクリプトームのデータより選んだ師部、内鞘細胞、または根冠細胞で特異的に発現している転写因子遺伝子を異所的に発現させ、これらの細胞が異所的に現れることを指標としたスクリーニングを行った。その際、師部、内鞘細胞、根冠細胞特異的にGFPを発現しているマーカー系統を用いた。師部に関しては、原生師部マーカーGFP系統であるS32以外に、師部伴細胞マーカーであるSUC2プロモーター:GFP系統も用い、師部分化をより詳細に観察した。その結果、伴細胞を誘導する能力がある転写因子、内鞘細胞を誘導できる転写因子などが見出された。内鞘細胞を誘導できる転写因子(転写因子No.51)は、内鞘細胞の性質であるオーキシンに応答した細胞分裂能を与えることも明らかにした。転写因子は、複合体として働くことがある。細胞タイプ決定因子と相互作用する転写因子を見出すため、産総研との共同研究を行った。支援班が関与して開発したシロイヌナズナ転写因子個別ライブラリーを用いた酵母2ハイブリッドスクリーニングにより、内鞘細胞を誘導できる転写因子はヘテロ複合体を形成して働いていることを見出した。また、発生を制御する分泌型ペプチドシグナル分子(CLE9)も見出した。CLE9は葉の表皮幹細胞で特異的に発現しており、葉の表皮幹細胞数を抑制していること、同じCLEグループの中でも、CLV3は葉の幹細胞には働かないのに対して、CLE9は葉の幹細胞数を抑制すること、葉の幹細胞抑制は新規の機構が関わっていることなどを見出した。
2: おおむね順調に進展している
植物の重要な細胞タイプでありながら、その分化の仕組みが明らかになっていない細胞として、師部細胞、内鞘細胞、根冠細胞がある。これらの細胞タイプを支配する転写因子を見出した。また、これらの転写因子の働きを理解するために、これら転写因子と相互作用する転写因子見い出すためのスクリーニングを、研究分担者との共同研究によっておこなった。研究分担者は、転写因子ライブラリーを用い、自動化した酵母2ハイブリッドスクリーニングを開発したので、信頼性の高いスクリーニングを行い、内鞘細胞決定因子が複合体で働くことを明らかにできた。また、これら転写因子の過剰発現体を用いたマイクロアレーにより、下流の制御系も明らかになりつつある。
これまでの研究で、師部細胞、内鞘細胞、根冠細胞へと分化させる能力をもつ転写因子をそれぞれ見い出すことができた。しかしながら、これらの転写因子に関しては、どれも、冗長的機能を持つ多くの遺伝子が存在するので、CRISPR/Cas9も用いて多重変異体の作成を進めている。多重突然変異体で表現型を得ることが非常に重要である。また、これらの転写因子に関しては、共同研究者の松井が開発した、ターゲット配列決定法を用いてターゲットを確定する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
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