計画研究
本研究においては、植物の師部構成要素、内鞘細胞、及び根冠の細胞の分化を制御する鍵転写因子を同定すること、また、それらを介して器官・組織の発生がどのように制御されているのかを解明することが大きな目標である。また、鍵転写因子の下流で細胞間シグナル分子が働くことや、逆に細胞間シグナル分子が鍵転写因子を制御する場合もあり、鍵転写因子とシグナル分子を含むネットワークの解明が課題である。前年度までに、2種の異なる転写因子(PEFa型、PEFb型と名付ける)の2量体が内鞘細胞のアイデンティティーを決定すること、特にオーキシンに応答した細胞分裂誘導能を与えることを見出している。本年度はこれらのPEFa群遺伝子の多重変異体の作成を進めている。篩部で特異的に発現するDofタイプの転写因子は、維管束細胞の分裂を制御することによって維管束細胞列の数を制御していることがわかった。これらDofにグルココルチコイド受容体を融合して発現させた形質転換体において、翻訳阻害剤の存在下と非存在下においてグルココルチコイド誘導遺伝子を解析し、サイトカイニン活性化酵素であるLOG3とLOG5が直接のターゲットであることが示された。篩部で発現するDof転写因子がサイトカイニンを介して維管束の細胞列を調節している可能性を考えている。また、これらのDofのターゲットとなっているペプチド性シグナル分子CLE25とCLE26は篩部で優先的に発現していることを示した。さらに、TDIFもDofの下流で働いており、その生理的重要性を調べる。
3: やや遅れている
内鞘細胞アイデンティティー決定因子の同定、篩部で働いて維管束細胞列数を支配するDof型転写因子の同定、気孔数の制御と導管細胞列の数の制御を行う新規シグナル分子CLE9の同定など、鍵となる重要な因子を同定している。ただ、冗長的に働く遺伝子の存在などから当初考えていたよりも研究に時間がかかっていて、論文公開が遅れている。
内鞘細胞決定因子は冗長的に働く遺伝子が多いので、CRISPR/Cas9法を用いて多重変異体を作成して機能解明を急ぐ。CLE9については論文公開を急ぐ。篩部で働き、維管束細胞列の制御をしているDof転写因子については、サイトカイニンと複数のペプチド性シグナル分子を介して作用していると考えており、これを証明する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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