計画研究
本研究は、これまで独立な現象であるかのように別々に研究されてきた「発生」と「代謝」に対して、それらの間に緊密に相互作用しあう制御関係が存在することを示すことを目的とする。メタボロミクス、数理モデリング、分子遺伝学を駆使して植物発生システムの観点から代謝システムをダイナミクスとして理解すると同時に、植物発生ロジックの解明に代謝研究の視点から貢献することを目指す。植物の各器官を器官たらしめる代謝ネットワークを解明し、代謝と発生がいかにリンクして相互に影響し合っているのかを分子レベルで解き明かす。また、当領域の研究基盤支援として細胞種別メタボロミクス技術を開発する。平成25年度は、理研の既存技術であるワイドターゲットメタボローム分析系、キャピラリー電気泳動質量分析機によるイオン性代謝産物の非ターゲットメタボローム分析系を用いて、計画班員との共同研究を複数行なった。また、液体クロマトグラフィ質量分析機を用いた非ターゲットメタボローム分析系を立ち上げるべく、同機器を理研に新規に導入した。分子遺伝学的研究としては、発生を制御する代謝経路の発見を目的として、シロイヌナズナのチトクロムP450機能破壊株を収集し、葉の形や根の長さなどの形態的表現型を定量的に解析した。数理モデリングに関しては、代謝ネットワークの構造を解明するための理論の構築を行った。またオーキシンパターン形成の多様性を説明する数理モデルを構築した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度10月までに技術員を採用して、新規突然変異体の表現型解析を開始しメタボローム分析系の立ち上げを行い、平成26年3月までに共同研究者提供の生物試料のメタボローム分析を行う計画であったが、技術員としての条件を満たす専門的知識を有した人材が見つからなかったため、上記は6ヶ月後ろ倒しに計画変更した。平成26年4月に、相応しい人材を技術員として雇用することができたため、変更後の計画は順調に達成することができた。
細胞種別メタボロミクス技術の開発は未だチャレンジングな取り組みではあるが、当領域の発展には重要な意味を持つ。技術開発が近年進んだ一細胞分析も視野に入れ、他の班員と共同で解析例を作っていきたいと考えている。数理モデルに関しては、現在、ネットワーク理論を中心代謝系ネットワークに適用する準備を進めている。中心代謝系のネットワークには、未知の反応や制御が存在する可能性が高い。実験と我々の理論を比較することで、未知の制御の予測と検証を行い、実際の化学反応系を解明できると期待している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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