計画研究
本研究では、始原生殖細胞(PGC)と多能性幹細胞の違いを生み出している遺伝子ネットワークの解析により、マウスのPGC形成機構を明らかにし、さらにその進化上の普遍性をいくつかのモデル生物を使って解明することを目的とする。これまでの研究で、転写因子のMaxやBrg1の働きにより、マウスES細胞がPGCとしての性質を直接獲得することが阻害されることが明らかになっている。そこで同様な機構が、プラナリア、ニワトリ胚、ゼブラフィッシュ胚でも保存されているかを調べる。平成25年度では、まずそれら遺伝子のホモログの同定を行い、プラナリアではMaxとBrg1についてホモログと考えられる遺伝子を得た。次にMaxの2本鎖RNAを合成し、プラナリアD.ryukyuensis OH系統に投与する方法でノックダウンを試みた。その結果、Maxの発現はコントロールの20%程度にまで低下し、ノックダウンはうまくいっていること、また一部の生殖細胞特異的遺伝子の発現がノックダウンにより上昇傾向を示すが、個体による発現差が大きいことがわかった。またニワトリのMaxホモログ遺伝子を同定し、ニワトリ胚の多能性細胞とPGCでMaxが発現していることを免疫染色により確認した。さらにMaxに対するshRNAを作成し、ニワトリ胚でノックダウンが可能なことを確認した。一方、ゼブラフィッシュについてもMaxホモログを確認し、初期胚への合成アンチセンスモルフォリノ(MO)注入によるノックダウン実験を行った。PGCで特異的にGFPを発現するvas::egfpトランスジェニック胚では、GFP陽性のPGCの増加傾向が認められたものの、in situハイブリダイゼイションによる検出では変化が認められなかった。少量のMO注入で発生異常が起こり、十分な量による効果の検出ができなかったことがこの原因として考えられる。一方、初期胚由来細胞の培養を進め、64細胞胚から細胞培養できることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
プラナリア、ニワトリ、ゼブラフィッシュで、ともにMaxのホモログ遺伝子が同定でき、またプラナリアとニワトリ胚ではMaxの発現とそのノックダウンが確認できた。このような理由から、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断できる。
プラナリアでのノックダウンについて、使用する個体の条件やノックダウンの期間や方法などについて、生殖細胞特異的遺伝子の発現誘導がより顕著で再現性良くおこる条件の最適化を試みる。ニワトリ胚については、初期胚細胞へのin vivoでのモルフォリノの導入は技術的に難しいので、初期胚から単離した多能性細胞でノックダウンを行い、生殖細胞特異的遺伝子の発現誘導を調べる。またゼブラフィッシュ胚でも64細胞期以降の初期胚細胞株を樹立し、多分化能を解析する。そして、その細胞を用いてMax遺伝子の生殖細胞関連遺伝子群への影響を解析していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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