計画研究
本研究はマウス配偶子幹細胞(GSC)である精子幹細胞の自己複製と分化を制御する細胞内外の遺伝子ネットワークを解明することを目的としている。具体的目的として①GSC の細胞レベルでの同定②精巣組織内における挙動のダイナミクスの計測と数理モデルによる解析③幹細胞ダイナミクスを制御する細胞外因子及びそれを発現する精巣細胞の同定を行っている。25年度までにGFRα1を発現する細胞全体が単独で存在するAs細胞であるか複数の細胞が細胞間橋によって連結した合胞体であるかという形態的不均一性に関わらず一つの幹細胞プールとして機能することを明らかにした。Asは不完全分裂によって合胞体を形成し合胞体は断片化によってAs へと転換する、これを繰り返すことで継続する精子形成を支えていることが示唆された(Cell Stem Cell 2014)。26年度は以下の成果を得た。まずGFRα1陽性細胞がNgn3陽性細胞へと分化する過程を制御する細胞外因子を検索しその候補因子を複数同定した。またGFRα1陽性細胞が不均一な遺伝子発現を示すことからその集亜団を見出した。これら不均一な発現を示す遺伝子の幾つかは上記の細胞外因子によって発現制御を受けている可能性が示唆された。さらにこれら細胞外因子を発現する特徴ある体細胞を同定した。また未分化型精原細胞がレチノイン酸のシグナルを受容して分化型精原細胞に転換する過程を制御する分子メカニズムの解明を進め、レチノイン酸受容体の一つRargの発現の有無によって分化する細胞と未分化にとどまる細胞の仕分けがなされている可能性を示した。さらに未分化型から分化型精原細胞へ移行する過程において機能する細胞内因子、特にゲノム修飾因子に着目して解析を行った。その結果、ヒストンメチル化酵素の一つMll2欠損マウスの精巣がこの移行時に一致して分化が障害される表現系を示すことを見出した。
2: おおむね順調に進展している
上記のように本研究の目的に向かって成果が着実に得られている。具体的には、幹細胞の自己複製と分化を制御する複数の細胞外因子とその発現細胞を同定した。いずれも新規の知見であり、本研究期間においてインパクトのある公表が期待される段階にある。以上により、概ね順調に進展していると判断した。
引き続き研究を推進し以下の解析を進める。①現在までに複数同定している幹細胞の自己複製と分化を制御する細胞外因子とその発現細胞の解析、②それに応答する幹細胞の機能と遺伝子発現制御の解析、③レチノイン酸反応性を決める分子メカニズムの解析、④ヒストンメチル化酵素Mll2が介在するヒストン修飾のGS細胞を用いたクロマチン免疫沈降法によるゲノムワイドな解析。
すべて 2016 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 11件、 招待講演 17件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (3件)
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