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2014 年度 実績報告書

in vitroにおけるPGC産生および分化のための新規培養系開発

計画研究

研究領域動物における配偶子産生システムの制御
研究課題/領域番号 25114006
研究機関九州大学

研究代表者

林 克彦  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20287486)

研究期間 (年度) 2013-06-28 – 2018-03-31
キーワード卵母細胞 / 始原生殖細胞 / 多能性幹細胞
研究実績の概要

本計画研究の目的は、第一にマウスの多能性幹細胞(ES/iPS細胞)を起点とした配偶子産生系(特に卵子産生系)を再現する体外培養方法を構築すること。第二に開発した体外培養系を利用して、in vivoでは細胞数が少なく解析が難しいPGCsの維持機構について他の計画研究班と協力して解析を行い、PGCsの維持を制御するために種間で保存されている遺伝子ネットワークを同定することである。
平成26年度までにES細胞から分化誘導した始原生殖細胞を胚齢12日目の雌生殖巣の体細胞と共培養させることにより、成熟卵子の作製に成功した。RNA-seq解析により、これらの培養過程で得られる始原生殖細胞、2次卵胞中の卵母細胞および成熟卵子の遺伝子発現は体内のそれぞれの卵母細胞系列と極めて良く似ていることが明らかになった。これらのことから卵子産生系の構築は得られた成熟卵子の機能性の検証のみとなった。
次に小林班との共同研究により、ショウジョバエOvoのマウスホモログであるOvol遺伝子のPGCsにおける機能について体外培養系を用いて解析している。現在までに、すべてのOvolファミリー(Ovol1, 2, 3)はPGCsの初期分化段階で発現していること、さらにOvol2遺伝子はOvol2a, 2b, 2cのスプライシングバリアントがあるが、これらのうちOvol2aと2bがPGCsの初期過程で発現していることを明らかにした。それぞれのノックアウトES細胞の解析の結果、Ovol2とOvol3のノックアウトES細胞からの始原生殖細胞の分化が阻害されていることが明らかとなった。平成26年度ではすべてのOvolファミリーのノックアウト(TKO)ES細胞の作製と解析を行った。またTKO細胞にそれぞれのOvol遺伝子を補完したES細胞を作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は特に多能性幹細胞を用いた卵母細胞系列の分化培養系の構築において、当初の計画を上回るペースで進展している。平成26年度までにES細胞から分化誘導した始原生殖細胞を胚齢12日目の雌生殖巣の体細胞と共培養させ、様々な培養条件を並行して検討することにより成熟卵子の作製に成功した。体外培養で得られた多能性幹細胞由来の卵母細胞系列における遺伝子発現をRNA-seq解析により体内のものと比較すると、予想以上に高い相同性が認められた。また卵母細胞の産生効率は極めて安定的に再現され、一度の培養実験で約200-400個の成熟卵子が得られるようになった。
ショウジョバエOvoのマウスホモログであるOvol遺伝子のPGCsにおける機能について体外培養系を用いて解析している。平成26年度において、Ovol-TKO ES細胞(OvolファミリーすべてをノックアウトしたES細胞)を用いた分化誘導研究において、Ovol2やOvol3の単独ノックアウトよりもTKO ES細胞では始原生殖細胞の分化が阻害されていることが明らかとなった。このことはOvol2とOvol3の機能冗長性を示唆するものであった。またOvol-TKO ES細胞にそれぞれのOvol遺伝子やバリアントを導入したES細胞を作製している。これによりそれぞれ遺伝子/バリアントの単独の機能について解明できることが期待される。

今後の研究の推進方策

多能性細胞を用いた卵母細胞の分化培養系の構築については、得られた卵子を体外受精に供することによりその機能性を検証する。具体的には多能性幹細胞由来の卵子の個体への発生能、および個体が得られた場合はその健常性や妊孕性を検証する。また遺伝子インプリントなどのエピゲノムについても詳細に解析する。また、これまでES細胞からの分化誘導のみをおこなってきたが、iPS細胞が本分化誘導系においてES細胞と同様に卵母細胞への分化するかについて検討する。
Ovolファミリーの機能解析については、Ovol-TKO ES細胞にそれぞれのOvol遺伝子やバリアントを導入したES細胞から始原生殖細胞を誘導することにより、その機能的十分性を解析する。その後、それぞれのES細胞から分化誘導した始原生殖細胞を用いてRNA-seqにより遺伝子発現解析を行う。この解析により、Ovolファミリーが制御する遺伝子群について検討する。またこの結果をショウジョバエのOVO変異体の遺伝子発現の結果と比較することにより、これらの動物種間で保存されている遺伝子ネットワークを抽出する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Induction of primordial germ cell-like cells from mouse embryonic stem cells by ERK signal inhibition.2014

    • 著者名/発表者名
      Kimura T, Kaga Y, Ohta H, Odamoto M, Sekita Y, Li K, Yamano N, Fujikawa K, Isotani A, Sasaki N, Toyoda M, Hayashi K, Okabe M, Shinohara T, Saitou M, Nakano T.
    • 雑誌名

      Stem Cells

      巻: 32(10) ページ: 2668-2678

    • DOI

      10.1016/j.stem.2015.03.002.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Perspectives of germ cell development in vitro in mammals2014

    • 著者名/発表者名
      Hayashi K, Saitou M.
    • 雑誌名

      Animal Science Journal

      巻: 85(6) ページ: 617-626

    • DOI

      10.1111/asj.12199.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Propagating generation of healthy mice using manifactured oocytes2015

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Hayashi
    • 学会等名
      Ovarian Club V
    • 発表場所
      香港
    • 年月日
      2015-01-31 – 2015-02-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Generation of eggs from mouse embryonic stem cells2014

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Hayashi
    • 学会等名
      Society of Reproduction and Fertility
    • 発表場所
      エジンバラ(英国)
    • 年月日
      2014-09-21 – 2014-09-21
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] in vitro gemline formation from pluripotent stem cells2014

    • 著者名/発表者名
      林克彦
    • 学会等名
      第47回日本発生生物学会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2014-05-27 – 2014-05-30
    • 招待講演
  • [学会発表] Prospects of gamete production from pluripotent stem cells2014

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Hayashi
    • 学会等名
      The 45th meeting of the Dutch Society of Obstetrics and Gynaecology
    • 発表場所
      オランダ
    • 年月日
      2014-05-23 – 2014-05-23
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Making Oocytes abd Babies from Stem Cells2014

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Hayashi
    • 学会等名
      The Congress of the Asia Pacific Initiative on Reproduction
    • 発表場所
      ブリスベン(オーストラリア)
    • 年月日
      2014-04-04 – 2014-04-08
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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