研究領域 | 動物における配偶子産生システムの制御 |
研究課題/領域番号 |
25114007
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 毅彦 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (50254222)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 精子形成 / 器官培養法 / マイクロ流体システム |
研究概要 |
私たちは、配偶子産生の制御機構の詳細を解明するためにはin vitro での実験系が必須であるとの認識から、主としてマウスを用いて研究を行っている。その成果として2010 年にマウス精巣組織片を用いた器官培養法により精子形成の再現に成功した(Nature 2011)。この成果は、古典的な手法である器官培養法に注目し、その有用性を最大限に活用した結果と言える。しかし、現在の培養法には少なくとも二つ大きな課題がある。一つは、培養下で組織を維持できる期間が2ヶ月足らずであり、精子形成の効率も非常に低いことである。2つは目、マウス以外の動物では精子産生が依然不可能なことである。最初の課題に関して、私たちは2つのアプローチを行っている。一つは培養液の改良である。そのためには現在用いているKSRとAlbuMAXという血清代替物の組成が不明であることが大きなハードルになっている。よって、化学組成の明らかな培養液によるin vitro精子形成の完成を目指している。徐々にではあるが、そのような培養液での精子形成の進行が見られるようになっている。もう一つのアプローチは、マイクロ流体システムの導入である。それにより生体内の微小循環系を模倣したin vitro系の作成に成功している。このデバイス内でのマウス精子形成の進行が見られるようになっている。2つめの課題では、ラットおよびマーモセットの精巣を使った実験をおこなっている。ラットの精子形成の進行をモニターするために、Gsg2-GFPトランスジェニックラットの作製を、共同研究で行った。それらの繁殖が進み、精巣組織培養を順次おこなっている。マウスとは違ってラット精子形成をin vitroで誘導することが予想外に困難であることが分かってきたが、それでも徐々に精子形成の進行が見られるようになってきた。更なる培養条件の改良を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標であるin vitro精子形成系の完成には、培養液の改良と培養システム(物理的環境)の両社が必要であると考えている。その両面において徐々に成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在の培養法を改良するために、培養液の組成を検討し、動物種毎に最適な培養液を開発してゆく。そのための基礎として、現在使用しているKSRとAlbuMAXという市販の培養液添加物を使用せずに、化学組成の明らかな培養液での精子形成法を完成する。また、培養液の改良だけでは、生体内に近い微小環境を作ることはできないとの判断から、マイクロ流体システムを導入した新しい培養系の開発に取り組んでいる。このシステムをさらに改良することで、生体内環境を模倣した培養法を開発し、in vitro精子形成へ応用する。マイクロ流体デバイスの改良に関しては、東京大学の藤井教授ならびに東海大学の木村講師と共同研究しており、その研究を加速するために、木村講師には2014年度から分担研究者になっていただいた。
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