計画研究
私たちは、配偶子産生の制御機構の詳細を明らかにするためにはin vitroでの実験系が必須であるとの認識から、主としてマウスを用いて培養系の開発研究を行っている。その成果として2010年にマウス精巣組織片を用いた器官培養法によりin vitro精子形成に成功した(Nature 2011)。この成果は古典的な手法である器官培養法に注目し、その有用性を最大限に活用した結果と言える。しかし、その培養法には少なくとも二つの大きな課題がある。一つは培養下で組織を維持できる期間が2ヵ月足らずであり、精子形成の効率も非常に低いことである。二つ目は、マウス以外の動物での精子形成は依然として不可能なことである。最初の課題に関して、私たちは二つのアプローチを行っている。一つは培養液の改良である。そのためには現在用いているKSRとAlbMAXという血清代替物の組成が不明であることが大きなハードルになっている。よって化学組成の明らかな培養液によるin vitro精子形成の完成を目指し、かつ培養液の改良に取り組んでいる。もう一つのアプローチは、マイクロ流体システムの導入である。それにより生体内の微小環境を模倣したin vitro系の作成に成功している。マイクロ流体デバイス内においてマウス精子形成の進行が見られ、その効率と持続期間を大幅に改善することに成功した。現在もデバイスの改良に取り組んでおり、より良い培養環境の開発が進んでいる。二つ目の課題では、ラットおよびマーモセットの精巣を使った実験を行っている。ラット精子形成の進行をモニターするために、Gsg2-GFPトランスジェニックラットを作製し、その精巣を用いて培養実験をおこなっている。マウス精子形成の培養条件をラットに応用しても十分な精子形成の進行が得られないことが明らかとなり、ラットに適して培養条件を模索している。それらの成果がようやく得られつつある状況にある
2: おおむね順調に進展している
目標であるin vitro精子形成系の完成には、培養液の改良と培養システム(物理的環境)の確立のふたつがが必要であると考えている。その両方において徐々に成果が得られつつある。
現在の培養法を改良するためには、培養液の組成を検討し、動物種毎に最適な培養液を開発してゆく。そのための基礎として、現在使用しているKSRとAlbMAXという市販の培養液添加物を使用せず、化学組成の明らかな培養液での精子形成法を完成する。また、培養液の改良だけでは、生体内に近い微小環境を作ることはできないとの判断から、マイクロ流体システムを導入した新しい培養系の開発に取り組んでいる。このシステムをさらに改良することで、生体内環境を模倣した培養法を開発し、in vitro精子形成に応用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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