計画研究
in vitroでの精子形成系を確立するために、主としてマウス精巣を用いた器官培養法を採用し、その改良に取り組んでいる。そのために、1)化学的側面と2)物理的側面の両面からのアプローチを行っている。1)としては、培養液の改良を目指し、そのために現在の培養液を化学組成の明らかな培養液に変換することを試みている。それにより精子形成を促進する因子の同定をめざしている。これまでに、重要な因子として血清アルブミン、レチノイン酸、種々の脂質(脂肪酸、リン脂質、等)およびホルモンとして、LH、FSH、Testosterone等が重要であることが明らかになってきた。血清中には、精子形成を促進する因子と阻害する因子の両方があることも分かっており、今後さらにその詳細を明らかにしてゆく予定である。2)としては、マイクロ流体システムを導入し、栄養素ならびに酸素供給の効率化を図っている。組織片を培養液と気層の境界部におく従来の方法とはことなり、シリコーン樹脂であるPDMSで作られてデバイス内に精巣組織片を入れ、その傍に培養液を流すことでその成果が得られている。マウスin vitro精子形成効率の向上と持続期間の延長に成功した。現在、更なる改良をおこなっており、より生体内に近い微小環境を作り出せると期待している。マウス以外の動物への発展としてラット精子形成実験を行っており、少しずつではあるが培養条件が改良できている。引き続き、至適培養条件の探究を行ってゆく。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標であるin vitroにおいて継続的に精子を産生する培養系の開発には部分的ながら成功しており、順調に研究は進んでいる。より安定的に高効率で精子産生できる系の開発に取り組んでおり、それがマウス以外の動物にも応用できる培養系の開発につながると考えている。
マイクロ流体デバイスにはまだ幾つかの点で改良の余地があり、それらを着実に詰めていきたい。それにより栄養素と酸素の供給効率を上げ、生体内環境により近似できると考えている。また培養液の改良には、これまで使用してきたAlbuMAXやKSRに依存するだけでなく、その他の試薬、動物血清等を用いて組織培養に適した培養液を作って行く。また、そのために培養組織と生体内組織のRNA sequence dataを解析する予定であり、vitroとvivoの比較から培養環境の調整を行ってゆく。
生殖再生医学・小川毅彦 研究室http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/proteome/ogawa/index.html
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Stem Cell Reports
巻: 8 ページ: 561-575
10.1016/j.stemcr.2017.01.006
Biology of Reproduction
巻: 95 ページ: 1-6
10.1095/biolreprod.116.140277