計画研究
1.c-fos-tTAマウスとレンチウイルス遺伝子導入系を組み合わせて、学習時に活動した扁桃体ニューロン特異的にチャネルロドプシン(ChR)を発現する系を確立した。2.文脈性恐怖条件付けを行ったマウスが恐怖記憶を想起しているときに、海馬、あるいは扁桃体にTat-Beclinを注入しオートファジー活性を亢進した。場所情報の処理に関わる海馬に注入したときは場所情報の不明確化が観察され、情動を司る扁桃体に注入したときは恐怖反応が減衰した。これらの結果から、オートファジー活性の亢進が、想起に伴う記憶の脆弱化を促進することが明らかになった。注入する脳部位により異なる表現型が現れることより、恐怖記憶の再固定化を抑制することによるPTSD等の治療法創出にあたって注意を要することも明らかとなった。3.in vivo海馬歯状回の長期増強(LTP)再固定化系を用いて、オートファジー活性の亢進により、シナプスの再活性化に伴うLTP脆弱化が促進される結果を得た。これは、オートファジーによるシナプス可塑性の制御が、上述した記憶の脆弱化のメカニズムであることを示唆している。4.当初の計画には入れてなかったが、記憶の脆弱化に関して、海馬からの記憶消去メカニズムとして神経新生の関与を示唆する予備的なデータを得た。
2: おおむね順調に進展している
1,2,3 のいずれの研究項目においても、本年度分として当初予定していた研究計画の目標を達成した。特に、記憶とシナプス可塑性の両方のレベルでオートファジー系が脆弱化に関与していることを示したことは特筆できる成果である。ただし、研究項目1の記憶エングラムと再固定化の研究テーマは、MITの利根川グループが我々に先んじて結果を出し論文投稿中との情報が筆頭著者から入った(その後、2015年5月現在、Science誌に印刷中とのこと)。そのために、全体としての達成度はおおむね順調とした。
「現在までの達成度」に記載した理由により、項目1の記憶エングラムと再固定化の研究テーマは本年度で中止する。項目2(記憶脆弱化とオートファジー)と項目3(LTP再固定化とオートファジー)は予定通りに進捗しているので、当初の計画通りに推進する。また、海馬の記憶容量保持・消去と神経新生の関係を明らかにする研究を新たな項目として追加する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) 図書 (4件) 備考 (1件)
PLoS. Biol
巻: - ページ: -
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/bmb/index-j.html