計画研究
1.記憶エングラムと再固定化: レンチウイルス遺伝子導入系で大脳皮質聴覚野のニューロンにチャネルロドプシンを導入した。この系を用いて聴覚野ニューロンと扁桃体外側核(LA)間のシナプスに、光遺伝学的にLTPやLTDを誘導するシステムを確立した。2.扁桃体のオートファジー活性の亢進が想起に伴う記憶の脆弱化を促進し完全な逆行性健忘を惹起することを明らかにした。そのシナプスレベルのメカニズムとして、オートファジーがシナプスからAMPA受容体を除去することを示した。3.in vivo海馬歯状回のLTP再固定化系を用いて、オートファジー活性によるLTP脆弱化はNMDA受容体を介していることを明らかにした。4.海馬歯状回に繰り返し高頻度刺激でLTPを誘導し、海馬の神経回路網が飽和したラットを用いて、X線照射による神経新生の抑制や回し車による神経新生の促進の効果を調べた。その結果、神経新生が飽和状態の海馬の神経回路網を回復させることにより、海馬の記憶容量を確保する働きを持つことを明らかにした。この結果は、大脳皮質等に比べて遙かに記憶容量が小さい海馬が、常に新しい記憶に対処できるメカニズムの存在を強く示唆している。
1: 当初の計画以上に進展している
研究項目2,3,4においては、研究が予想以上に順調に進み、当初予定していた研究計画の目標を達成した。そのために、全体としての達成度は当初の計画以上に進展しているとした。
研究項目2,3,4は当初の目標を達成したために、今後は研究項目1の記憶エングラムと再固定化の研究テーマに研究資源を集中する。研究項目1は、今までポスドク研究員一人で行っていたが、H28年度からは更にポスドク研究員と大学院生をそれぞれ1名増員し、3名体制で研究を進める。タンパク質合成阻害剤とTat-Beclinを組み合わせて扁桃体に注入することで完全な逆行性健忘を引き起こすことができるという我々の発見の利点を活かし、逆行性健忘が記憶エングラムの消失によるのか、それとも記憶エングラムは残っているが想起ができない状態なのかに明瞭な結論を出す。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件) 図書 (6件) 備考 (5件)
Molecular Brain
巻: 9 ページ: -
DOI: 10.1186/s13041-016-0216-4
Cell Reports
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http://www.sciguru.org/newsitem/18834/researchers-create-artificial-link-between-unrelated-memories
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp536.html