記憶はいったん獲得すれば永遠不変では無く、時間やその後の様々な経験により変化することが知られている。例えば、エピソードなどの記憶は時間経過とともに詳細が失われていく「汎化」と呼ばれる現象が知られている。そこで、この動的な記憶表出の変化の神経基盤を理解するために、文脈依存的な恐怖条件付け学習課題を応用して、マウスにおける汎化のモデルとなる行動実験系を確立した。 この系を用いて、マウスが文脈記憶の汎化を示さない学習の1日後と、汎化を示す9日後における記憶の想起テスト時にそれぞれ活動する脳の領域を最初期遺伝子の免疫組織科学染色法により明らかにした。さらに、時間的に離れた2点での神経活動を、同一個体の脳内において単一細胞の解像度で可視化することが可能な活動履歴可視化マウスを用いることにより、記憶の獲得時と想起時(1日後と9日後)のどちらの過程でも活動する細胞、つまり再活動する細胞の割合を脳の各領域において計測し、解析を行った。
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