記憶機能は加齢とともに低下する。本研究では、記憶機能が低下した脳機能老化モデルマウスを用いて、その記憶機能を通常マウスと比較することにより、記憶機能低下の原因をつきとめる。我々はこれまでに、脳梗塞モデル動物やアルツハイマー病モデルマウスを用いた研究から、記憶機能が低下するメカニズムの一つに脳血管障害を伴う脳組織内炎症があることを見出してきた。そこで本研究では、当該モデルマウスを用いて、機能機能が低下した状態のマウスの海馬からmRNAを抽出し、マイクロアレイ用のアンプルを調整し、通常マウスの遺伝子発現様式と違いを調査した。その結果、炎症に関わる複数の分子群において、その遺伝子発現が変動していること、さらにはGABAやアセチルコリン神経系の遺伝子においても発現変動があることを認めた。 また、本研究においては、脳機能老化モデルマウスとして、加齢に伴い海馬新生ニューロンの数が減じることに基づいて、新生ニューロンのシナプス機能を特異的に制御できるマウスを遺伝子組み換えを用いて作成した。そして、この特異的機能阻害マウスを利用し、申請者が新たに導入した高分解能マウス用14.1T-MRI装置を用いて、これらモデルマウスと通常マウスの脳神経回路の構造と機能の違いを明らかにすべく、今年度は、まずはその研究手法の開発を進めた。そのために、マウスより機能MRI画像を取得する方法を確立するとともに、その画像データを解析する方法を整えた。
|