研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
25115005
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉原 良浩 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (20220717)
|
研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
キーワード | 嗅覚記憶 / ゼブラフィッシュ / 嗅覚インプリンティング / 母川回帰 / 神経回路 / 嗅覚条件付け記憶 / 遺伝学的単一ニューロン標識法 / 嗅覚行動 |
研究概要 |
嗅覚は、餌を探し出す、交配相手を見つける、親子を識別する、危険から逃避するなど、すべての生物にとって個体の生存や種の保存に直結する重要な化学感覚である。すなわち外界に存在する多種多様な匂い分子が嗅細胞で受容され、その情報が嗅球さらには高次嗅覚中枢へと伝達・処理されて、嗅覚イメージの形成、快不快の情動創出、さらには匂い記憶の成立へと至る。本研究では嗅覚記憶の時空間的ダイナミズムの分子・細胞・回路メカニズムの全貌を明らかにすることを目的とし、遺伝学・発生工学・神経解剖学・神経活動イメージング・電気生理学・神経行動学など多様な実験手法を駆使できるゼブラフィッシュをモデル生物とした統合的解析を行う。平成25年度においては以下の2つの項目について研究を行い、次年度につながる重要性かを得た。 1.ゼブラフィッシュ嗅球から高次嗅覚中枢へと至る二次神経回路の包括的プロジェクトーム解析: 遺伝学的単一ニューロン蛍光標識法と最新の画像レジストレーションシステムを組み合わせることにより、嗅球出力ニューロンの軸索投射パターンを包括的に解析した。その結果、嗅球出力ニューロンは5つの標的脳領域に異なったパターンで軸索を投射し、それぞれの領域における匂い情報の収束・処理メカニズムの相違性が明らかとなった。本研究で得られた知見は嗅覚記憶の神経メカニズム解明のための基盤データとなる。 2.嗅覚インプリンティングを司る神経メカニズム解明のための行動実験システムの開発: サケの母川回帰行動を実験室内のゼブラフィッシュで再現し、遺伝学・神経解剖学・神経活動イメージング技術を組み合わせることで、嗅覚インプリンティングを司る分子・細胞・神経回路メカニズムを解明するために、平成25年度はまず嗅覚インプリンティングを評価する行動解析システム(Y迷路)の確立を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ二次嗅覚神経回路の包括的プロジェクトーム解析については順調に進展し、すでに論文発表を行うことができた(Miyasaka et al., Nature Communications, 2014)。また嗅覚インプリンティングについても行動実験システムの立ち上げが完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
嗅覚インプリンティングの神経メカニズム解明へ向けて、匂い分子のスクリーニング、それらの嗅覚受容体の同定、GFP及びGal4発現トランスジェニックゼブラフィッシュの作製など、予定している実験をさらに進展させる。また平成26年度からは、報酬・恐怖と関連させた嗅覚条件付け記憶を制御する神経メカニズムの解明に向けた研究にも着手し、ゼブラフィッシュをモデル生物としての嗅覚記憶ダイナミズムの解明へと挑む。
|