計画研究
嗅覚は、餌を探し出す、交配相手を見つける、親子を識別する、危険から逃避するなど、すべての生物にとって個体の生存や種の保存に直結する重要な化学感覚である。すなわち外界に存在する多種多様な匂い分子が嗅細胞で受容され、その情報が嗅球さらには高次嗅覚中枢へと伝達・処理されて、嗅覚イメージの形成、快不快の情動創出、さらには匂い記憶の成立へとる。本研究では嗅覚記憶の時空間的ダイナミズムの分子・細胞・回路メカニズムの全貌を明らかにすることを目的とし、遺伝学・発生工学・神経解剖学・神経活動イメージング・電気生理学・神経行動学など多様な実験手法を駆使できるゼブラフィッシュをモデル生物とした統合的解析を行う。平成27年度においては以下の研究を行い、次年度につながる重要な成果を得た。1)嗅覚インプリンティングを司る神経回路メカニズム解明のために、行動解析装置(Y字型迷路)の改良を行った。新たな装置内では、匂い物質がほぼ混ざり合わずに2つの流路を形成し、ゼブラフィッシュの匂いに対するpreferenceあるいはaversionをはっきりと観察できるシステムの構築に成功した。2)嗅覚報酬記憶の新たな実験系を立ち上げた。特定の匂いを餌報酬と連合させることによって、ゼブラフィッシュはその匂いに対して明らかなpreferenceを示すようになった。本システムを用いることにより、嗅覚記憶の神経回路機構の解析が可能となる。
2: おおむね順調に進展している
嗅覚インプリンティングの実験システムの改良、餌報酬と連関した嗅覚記憶を引き起こすシステムの構築など、研究全般においてほぼ予定通り順調に進行している。
今後は、嗅覚記憶を引き起こす匂い分子の嗅覚受容体の同定、その受容体を発現する嗅細胞にGFPおよびGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの作製、嗅覚インプリンティングおよび餌報酬との嗅覚連合記憶に関連する脳部位の同定など、本研究をさらに進展させる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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巻: 印刷中
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http:/ / www.brain.riken.jp/ jp/ faculty/ details/ 53