私たちはショウジョウバエをモデルとして、求愛歌の情報がどのように受け手の脳内に「記憶」として経時的に蓄積され、最終的な適応的行動発現を促すのか、という課題に挑んだ。まずは、求愛歌情報を処理する神経回路構造を理解するため、一次聴覚中枢に投射する神経細胞群を網羅的に同定し、投射様式を解明した。次に、求愛歌の聞き分け機構として、リズム選別を担う「フィードフォワードループ」と呼ばれる様式の神経回路を同定した。さらに、幼少期の聴覚経験がGABAを介して歌識別能力と性行動を成熟させることを見出した。以上、本研究により、求愛歌の情報処理と記憶を担う神経回路機構の新たな側面を発見した。
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