研究領域 | 多様性から明らかにする記憶ダイナミズムの共通原理 |
研究課題/領域番号 |
25115010
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 雄一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40192471)
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研究分担者 |
饗場 篤 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20271116)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 線虫 / マウス / 学習 / 長期記憶 / ホスホリパーゼC |
研究概要 |
1.短期記憶、特に刺激強度の記憶: 線虫は特定の塩濃度で餌の存在下で飼育されると、以前に経験していた塩濃度付近に向かう。逆に、餌がない状態で飼育したのちには、経験した塩濃度を避けるように行動する。この塩濃度の記憶の機構について研究を進めた。今回、餌有りでの飼育後にのみ、野生株より高塩濃度に向かう傾向を持つ変異体を複数分離し、マッピングを進めた。さらに、次世代シーケンサーで全ゲノム配列を決定中である。 また、ホスホリパーゼCεのホモログplc-1の機能獲得型変異体が高塩濃度に、機能欠失変異体が低塩濃度に向かう傾向を持つことを見いだしている。カルシウムイメージングの結果、PLC-1が塩の受容に関わるASER神経で働きAIB神経へのシナプス伝達を制御していることを示唆する結果を得た。次年度以降、PLC-1経路の動態をイメージングにより調べ、塩濃度記憶の分子実体に迫る。 2.長期記憶、短期から長期への固定化: 長期記憶の実験系の構築を試みた。既報に従い、匂いへの化学走性の長期学習系を複数試したが、いずれも満足できる形で再現できなかった。そこで、塩濃度学習に関する新たなパラダイムを考案し、繰り返し条件付けを試みた結果、間を置いた繰り返し条件付けにおいて4時間時点での記憶保持が有為に優れていた。 3.一細胞での分別記憶の機構: ASE神経が複数のモダリティを感知し、記憶できることが分かってきたので、これらの記憶が交差するかどうかを調べるとともに、左右のASER、ASELの寄与について調べた。 4.マウスにおける学習関連遺伝子の機能解析: 線虫の知見をもとに、インスリン受容体の細胞内局在制御にカルシンテニンが関わるかを検討した。3つのカルシンテニン遺伝子に対するsiRNAを子宮内電気穿孔法でマウス大脳皮質の神経細胞に導入したところ、受容体の局在が変化するという予備的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は昨年7月に内定通知を受けてから開始したので研究期間が短く、自ら期待した進展の度合いには達しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」記載の番号に従うと、1)は次世代シーケンサーの結果から次年度原因変異を同定することができると予想されるので、その遺伝子の機能の解析に進む。2)は、理想的なものかどうかは分からないが、一つ長期学習のアッセイ系が構築できたので、今後このアッセイ系でさまざまな変異体を調べ分子機構について検討する予定である。3)は変異体の分離を開始しているので、次年度以降原因遺伝子が決定できることを期待している。4)はsiRNA処理により何が起こっているかを慎重に調べ、ノックアウトマウスを作成することが適当と判断されたらノックアウトの作成に進む。以上、今のところ大きな問題点は予想していない。
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