1)短期記憶、特に刺激強度の記憶: 分子イメージングによりASER感覚神経のシナプス部位でのジアシルグリセロール量が感覚入力により両方向に変化することを観測した。さらに、飢餓によりこの変化が小さく短くなることを明らかにし、これらの結果を論文発表した。一方、CLC型塩化物イオンチャネルはASER感覚神経で働き塩濃度走性を制御することがわかった。 2)記憶シグナルの細胞間転移: 飢餓状態で経験した塩濃度を避けるようになる学習で、ASER感覚神経とASG神経の両者が必要であることを見出し、ASG神経がASERからの入力を制御する重要な神経であることを明らとした。また、TORシグナル伝達経路の機能が塩濃度記憶に重要であることを見出した。TORC1、TORC2双方が関わっていたが、TORC2については腸で働くことにより頭部感覚神経による塩嗜好性を調節することがわかった。この結果を論文に発表した。 3)長期記憶、短期から長期への固定化: CREB転写因子とDAF-16 FOXOの変異が塩濃度の学習に異常を持つことを見出した。さらに、DAF-16は少なくとも一部の機能についてはASER感覚神経での働きが重要であることを明らかにし、さらに、ASER神経におけるDAF-16の活性化が低塩への走性を引き起こすことを明らかにした。 4)マウスにおける学習関連遺伝子の機能解析: マウスの3つのカルシンテニン遺伝子を破壊した3重遺伝子破壊マウスを作成したので、脳の組織染色と行動バッテリーテストを行った。この結果、パルブアルブミン陽性神経の顕著な減少が見られるとともに、過活動性や、不安情動、社会性行動など複数の行動に異常が見られた。これにより、3つのカルシンテニンは一部冗長に働き、多くの高次脳機能に重要な働きをすることが明らかとなった。
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