計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
真核生物ゲノムDNAの細胞核内での本体であるクロマチンは、動的に構造変動することによってDNA機能制御を行っている。本研究では、このようなクロマチン構造の動的実体の解明を目指して、構造生物学、計算科学、生化学、細胞生物学的研究を推進し、クロマチン動構造の実体を解明することを目的とする。本年度では、クロマチンの基本ユニットであるヌクレオソームの構造および動態の多様性を、再構成ヌクレオソームを用いて、構造生物学的、生化学的、および細胞生物学的手法によって解析した。まず、ヒストンH2Aのバリアント、H2A.Z.1、H2A.Z.2、およびH2A.Bに着目した。そして、H2A.Z.1およびH2A.Z.2を含むヌクレオソームが、通常型のヒストンH2Aを含むヌクレオソームと比較して不安定であることを発見した。H2A.Z.1およびH2A.Z.2を含むヌクレオソームの立体構造をX線結晶構造解析法により明らかにし、H2A.Z.1およびH2A.Z.2は、いずれもL1ループ領域にてヌクレオソーム内で接触しており、L1ループ領域が構造的にフレキシブルであることを明らかにした。また、H2A.Bに関して、細胞生物学的解析およびX線小角散乱解析を行い、H2A.BがDNA損傷部位に集積すること、H2A.Bを含むヌクレオソームでは両端のDNA部分がフレキシブルであることなどが明らかになった。加えて、クロマチン動態に重要と考えられているヒストンテール領域の構造的役割を解明するために、個々のヒストンテールを欠失したH2A、H2B、H3.1、およびH4を含むヌクレオソームを再構成し、それらの立体構造を決定することに成功した。さらに、セントロメア特異的なクロマチン構成タンパク質の機能解析も行い、クロマチンドメイン形成機構に関する重要な知見を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
クロマチン動構造をヌクレオソームレベルで解析するために、ヒストンH2Aバリアントである、H2A.Z.1、H2A.Z.2、およびH2A.Bを含むヌクレオソームの再構成を行い、これらの立体構造の解析を行うことに成功した。並行して、生化学的および細胞生物学的解析を行うことで、これらを含むヌクレオソームの機能発現機構に関する知見を得ることもできた。また、クロマチンドメイン形成に重要なヒストンテールやセントロメア形成因子の解析も進展し、クロマチンドメイン形成機構に関する重要な知見を得ることができた。これらの成果は当初の計画を大きく上回っており、本年度は計画以上に研究が進展したと考えられる。
本年度の研究によって、今後の研究を遂行する上で重要な技術を得ることができた。特に、H2Aバリアントの解析によって得られた技術は、クロマチン動構造の中心的役割を果たすH3バリアントの解析に直接応用できるものである。今後は、H3バリアントの解析へと研究を発展させる。また、高次のクロマチンを再構成して、それらの構造と機能の解析を行うことも重要である。現在、そのための技術は確立しつつある。
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