計画研究
真核生物のゲノムDNAは核内にクロマチン構造としてコンパクトに収納されている。しかし、転写、複製、組換えでは、基本構造であるヌクレオソームからDNAが解けたり、ヌクレオソーム自体が一旦破壊され再構築されたりとその構造をダイナミックに変える。生物は、この過程を通して、制御因子などDNA結合タンパク質のアクセスを制御し、DNAの持つ情報を発現している。本計画班では、分子動力学シミュレーションを用い、原子レベルやアミノ酸や塩基をひとかたまりと見た粗視化レベルで、ヌクレオソームやポリヌクレオソームの構造安定性や構造揺らぎなどがクロマチンに及ぼす影響を調べる。これにより、動的なクロマチンと機能発現メカニズムの関係を明らかにする。さらに、計画班の他の実験研究者と共同し、核内でのクロマチン動態とヒストンバリアントや化学修飾の関係を構造安定性や揺らぎなど計算科学的なアプローチにより定量的に明らかにする。本年度は、他の研究計画班で決定された、4種類のヒストンバリアントから構成されるヌクレオソームや化学修飾を受けたヌクレオソームについて、100ナノ秒から300ナノ秒の分子シミュレーション計算を実施し、実験的には捉えることが困難な、ナノ秒からミリ秒の原子、分子のダイナミクス解析を行った。また、新規に見つかったH3ヒストンバリアントの構造をシミュレーション計算により予測し、なぜヌクレオソームが不安定になるのかその要因を推定した。
2: おおむね順調に進展している
順調に計算が進んでいる。また、他の計画班との連携も順調である。
引き続き、モノヌクレオソーム系でのダイナミクス解析、高次クロマチンダイナミクスシミュレーションの実施と解析、シミュレーション計算結果と生細胞イメージングデータとの相関解析等を行っていく。特に、博士研究員とともに、ヒストン構成の異なるヌクレオソームがつながったポリヌクレオソームの動態解析を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
PLoS ONE
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