計画研究
動的クロマチンを理解するためには、クロマチンの階層を統合的に理解する事が必要不可欠である。クロマチンの階層の一つの要であるヘテロクロマチンが、ヒストン修飾とHP1を基盤としてどのように凝縮した構造を形成し、どのように頑強性と可塑性を兼ね備えた遺伝子発現制御という機能を発揮しているか不明な点が多い。本研究では、これまでに見いだしたヘテロクロマチンの分子ネットワークを基軸に、ヘテロクロマチン構造の構築と機能制御の分子基盤の解明を行うことを目的としている。ヒトPRC2複合体のSUZ12が、SUZBPs3種類、PCLs4種類が結合するプラットフォームであることを明らかにしてきたが、当該年度は、さらに、様々な変異SUZ12を作成し、バキュロウイルスの発現系、動物細胞の発現系を用いて、これらの相互作用に必要なアミノ酸配列を明らかにした。それぞれの因子とSUZ12との相互作用は、SUZ12上の共通の配列を必須とするが、異なる配列も必要とし、排他的に結合するメカニズムの詳細が明らかとなった。SMCHD1に関しては、公募班の佐渡敬教授と共同で、ノックアウトマウス由来のMEFを解析し、常染色体上のあるインプリント領域において、一部のアリル特異的な発現抑制に関与することが明らかになった。また、ヘテロクロマチン因子SCAIが損傷応答に寄与するメカニズムを明らかにするために、SCAI機能阻害したところ、Rif1、53BP1の集積が促進し、Rad51の集積が遅延することが、損傷後の経時的なイメージング観察により明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
PRC2複合体のバリエーションを生み出す分子メカニズムをさらに詳細に解析し、SUZ12上のある領域に複数のアクセサリータンパク質が結合することが明らかとなり、アクセサリータンパク質の機能を探るために重要な知見が得られた。佐渡教授との共同研究により、SMCHD1、HBIX1のノックアウトマウスによる解析が進み、発生段階における、不活性X染色体、常染色体上の表現型が少しずつ記述できるようになり、これらの因子の機能を考える上で情報が集まりつつある。また、SCAIについては、DNA2本鎖切断修復における機能とメカニズムが明らかになりつつある。
SUZ12が全てのアクセサリータンパク質と結合しなくなる点変異を見出したので、この変異による表現型を明らかにすることが可能となった。また、前年度までの知見をもとに、G9a複合体とORC複合体との結合とヒストン修飾H3K9me2/me3との共局在を基軸に、G9aのバリエーションとクロマチン機能との関係を明らかにする。また、SCAIのDNA2本差切断における機能をRIF1とともに位置付けたい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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