計画研究
本研究は、クロマチン動態の正確な「計測」と再構成ポリヌクレオソームを用いた「再構築」を行い、生細胞や生物個体におけるクロマチンの動的変化とその機能発現における意義を明らかにすることを目的として行っている。本年度は、転写活性化とヒストン修飾の動態に関する研究を主に行った。活性化型RNAポリメラーゼII(RNAP2)の指標となるリン酸化修飾をFabLEM法により検出し、RNAP2による転写の開始と伸長のキネティクスを生細胞で計測した。転写の開始と伸長時に見られるRNAP2の最大サブユニットのC末端領域(CTD)のセリン残基のリン酸化に修飾に特異的なモノクローナル抗体を作成し、それらの蛍光標識Fabを生細胞計測に用いた。モデル系として、ステロイドホルモンの一種であるグルココルチコイドで誘導される遺伝子アレイの転写活性化を計測した。これらの計測データなどを元に、転写活性化のキネティクパラメータを求めた結果、転写開始の効率が10%程度であるのに対して、開始から伸長への移行は80%以上の高効率で起こることがわかった。さらに、転写活性化のキネティクスにヒストン修飾がどのように影響を与えるのかを調べるたところ、ヒストンH3K27のアセチル化(H3K27ac)がホルモン誘導前から遺伝子アレイ上に濃縮されていることが明らかになった。H3K27acのレベルと転写活性化の関係を解析した結果、ホルモン刺激前にH3K27acレベルが高い細胞では転写因子の遺伝子アレイへの集積とRNAポリメラーゼIIの転写開始から伸長への移行が促進されることが分かった。H3K27acによる転写制御には、アセチル化結合ドメインを持つアセチル化酵素であるp300と巨大転写伸長複合体を介してRNAポリメラーゼIIの伸長反応を促進すると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
FabLEM法を用いて、転写活性化におけるヒストン修飾の役割を明らかにした意義は大きいと考えている。
これまでの研究体制を継続し、培養細胞を用いた系で詳細な解析を行いつつ、動物個体を用いた系で発生や分化に伴うクロマチン動態を明らかにしていく。また、次年度以降は「再構成」系にも取り組む。
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すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 18件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 15件) 備考 (2件)
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