計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
マウスC2C12細胞の骨格筋分化をモデルとして、各ヒストンバリアントの機能とバリアントの多様性が生み出すヒストン修飾、局所的なクロマチン構造、空間的な染色体配置を体系的に明らかにすることを目指した。これまでに、マウス新規ヒストンH3バリアント遺伝子群の同定とクローニングを行い、各バリアントのGFP融合蛋白質の発現を誘導できるマウスC2C12株を樹立した。この発現株を用いて、各GFP融合ヒストンバリアントのクロマチンへの安定的な取り込みを大阪大学 木村宏先生のグループとの連携によりFRAP(光褪色後蛍光回復法)により明らかにした。解析は全17クローンについて行った。更に、分化前後でのGFPタグ抗体を用いたChIP-seq(クロマチン免疫沈降と塩基配列解析)により、各バリアントのゲノム上の分布を明らかにした。但し、発現の安定性からFRAPによりクロマチン領域への取り込みが確認されたクローンについてのみ解析を行った。未知ヒストンバリアントアミノ配列情報は、早稲田大学 胡桃坂仁志先生のグループによるヌクレオソーム構造解析に供された。ついで、各種バリアントに対する抗体を作製し、内在性バリアントの局在とマウス組織での蛋白質発現プロファイルを明らかにした。現在4種の新抗体の作出を行っており、固有の発現パターンを確認している。また、各バリアントの過剰発現株を分化誘導し、遺伝子発現変化、核と細胞の形態変化、骨格筋マーカーの発現などの解析を行った結果、H3バリアントの細胞分化における機能は大きく3群に分けられることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度では樹立したC2C12細胞株を用いて、各GFP融合H3バリアントのクロマチンへの取り込みとその安定性を木村班との連携によりFRAP(光褪色後蛍光回復法)を用いて解析を行い、9クローンの安定取り込み型ヒストンを同定した。FRAPによりクロマチンへの取り込みが確認されたH3バリアントについては、GFPタグ抗体を用いてChIP-seqを行い、分化前後でのゲノム上の分布を明らかにした。これらは研究計画通りに進んでおり、極めて順調に推移している。各H3バリアントにより形成される特異的なクロマチン構造を解明するために、ゲノム上の局在が明らかになったH3バリアントについて、ヒストン修飾ではなくヌクレオソームの配置全容について解析し、クロマチン構造動態をより直接的に評価する手法を採用した。また、新たなヌクレオソーム配置を解析する手法を開発し、現在論文投稿中である。本研究進捗は当初見込みを大幅に上回り進展している。
研究の進捗に問題はなく、研究計画に基づき2年目を遂行していく。特に特異的抗体が作製出来たバリアントについては、マウス組織での蛋白質レベルでの発現解析を行う。細胞分化に影響を与えたバリアント2種に関しては、山縣グループとともにノックアウトマウスの作出を行い、遺伝学的・組織学的アプローチによる機能解明を優先的に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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