計画研究
骨格筋分化遺伝子のプロモーター領域がヒストンバリアントH3.3により予めマーキングされることが、その後の遺伝子発現のために必須であることを報告した。また、骨格筋分化においてH3.3の発現は未分化状態で高く、分化に伴い低くなることが明らかになっている。そこで、骨格筋未分化段階でH3.1とH3.3の骨格筋遺伝子上での取り込みバランスを強制的に変化させることにしたを試みた。未分化段階の骨格筋芽細胞C2C12細胞にGFP-H3.1を強制発現させ、分化誘導を刺激すると、骨格筋分化が抑制されることが明らかとなった。ChIP-seq解析の結果、GFP-H3.1強制発現細胞ではGFP-H3.1が取り込まれ、内在性H3.3のクロマチンへの取り込みが減少していることが明らかとなった。一方でH3.3を強制発現させた場合、骨格筋分化が亢進することが明らかとなった。そこで、骨格筋遺伝子の制御領域に、H3.3あるいはH3.1が取り込まれることで、どのようなヒストン修飾の変化が生じたかChIP-seqにより解析を行った。その結果、GFP-H3.1の取り込みによりH3K4me3修飾が減少しH3K27me3修飾が上昇していた。これらにより双極性修飾の状態から抑制性修飾の状態に偏ることで分化能抑制を招いたことを示唆していた。(Harada et al Nuclei. Acids, Res 2014)。また、未分化段階では骨格筋遺伝子座が近接しており、この近接が未分化段階での遺伝子活性化抑制に寄与していることが示唆された(Harada et al Nuclei. Acids, Res 2015)。以上の結果により、未分化段階で骨格筋遺伝子座が近接している領域へのヒストンバリアントの集積が、単に遺伝子発現のON/OFFではなくゲノムワイドな同調的制御に関わっていることを明らかとした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、細胞分化にともなうクロマチン変動メカニズムを解明するために、骨格筋分化をモデルとして、各ヒストンH3バリアントの機能とバリアントの多様性が生み出すヒストン修飾、局所的なクロマチン構造弛緩、クロマチン間相互作用等を体系的に明らかにすることを目的としている。現在までに、[1] 骨格筋分化能形成はヒストンバリアントH3.3及びH3.1/H3.1の発現量比により制御される(Harada et al Nuclei. Acids, Res 2014)。(Harada et al Nuclei. Acids, Res 2015)。[2] 骨格筋分化能形成による新規ヒストンH3バリアントの機能(投稿中)の2点について、報告済み、投稿中である。更に、これに加えて先行してヒトバリアント解析を開始しているマウスH3バリアント探索解析の手法を用いてヒトゲノムでも同様に、未知ヒストンH3バリアントを探索した結果、3つの遺伝子を同定した(仮称:AP6、PS2、AP5)。発現検証を行い、AP6は卵巣、AP5はヒト胚で発現が高いことが明らかにした。現在抗体を作成している。以上極めて順調に進展している。
平成26年度までの解析結果は、特定のヒストンバリアントの強制発現が細胞の分化能を変化させることを示した。一方で、内在性の未知ヒストンH3バリアントの機能は未だ不明である。そこで以下に提案する解析を行う。(1)遺伝子破壊による細胞レベルでの機能解析:内在性のH3mm7、H3mm13、及びH3mm15の機能解析を行うためにCRISPR/Cas9を用いて遺伝子破壊を行う。(2)Trans-differentiationによる機能解析:これまでの解析で、NIH3T3線維芽細胞にH3.3及びH3.1を安定的に発現させた株を樹立し、筋特異的転写因子MyoDを導入することで分化能がC2C12における強制発現株同様に変化することを明らかにしている。新規ヒストンバリアントはアミノ酸配列が異なるが、ヒストンH3バリアント間の機能的な相補性については検証できていない。そこで、遺伝子破壊株のデータの相補的な解析として、線維芽細胞を用いた骨格筋細胞へのTrans-differentiation系を用いて、H3mm7、H3mm13、及びH3mm15の骨格筋分化能制御への影響を評価する。(3)組織及びマウス個体レベルでのH3バリアント機能解析。これに加えて各種ヒトヒストンH3バリアントの機能解析を進めていく。
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