計画研究
以下の4戦略により研究を進めた。【戦略1】Ca2+シグナル動態解析 タンパク質型Ca2+プローブ(YC-Nano50)を細胞種特異的に発現する遺伝子改変マウスを用い、覚醒状態で脳内Ca2+シグナルの生体内計測を可能とした。神経細胞、アストロサイト、および血管平滑筋細胞にYC-Nano50を発現する遺伝子改変マウスを作製して、神経細胞、アストロサイト、血管平滑筋細胞でのCa2+動態を比較することに成功した。その結果、アストロサイトのCa2+応答は血管弛緩に遅れることを明らかにした。また、感覚入力に伴うアストロサイトのCa2+応答は青斑核由来のノルアドレナリン投射神経活動に制御されていることを明らかにした。【戦略2】細胞内Ca2+放出機構解析 小胞体内腔Ca2+プローブ(G-CEPIA1er)ノックインマウスとドライバーマウスの交配により、アストロサイト特異的にG-CEPIA1erを発現するマウスを作製した。また、アストロサイトにG-CEPIA1erを発現させるためのウイルスベクターを作製した。これらにより、アストロサイトにおけるCa2+放出を高感度に可視化できることを確認した。【戦略3】グリオトランスミッター可視化 2色の蛍光小分子を結合させた新規ATPプローブを用い、大脳皮質拡延性抑制モデルおよび、脳梗塞モデルにおける細胞外ATP濃度上昇の解析を進めた。【戦略4】Ca2+シグナル阻害による摂動実験 IP3分解酵素(5ppase)を細胞選択的に発現させることによりアストロサイトのCa2+シグナルを阻害した遺伝子改変マウスを作製した。これを戦略1の研究に用い、アストロサイトCa2+シグナルの血流制御における意義について解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
上記の研究実績概要に示した通り、神経細胞、アストロサイト、および血管平滑筋細胞にYC-Nano50を発現する遺伝子改変マウスを作製して、神経細胞、アストロサイト、血管平滑筋細胞でのCa2+動態を比較することに成功している。また、IP3分解酵素(5ppase)をアストロサイト特異的に発現させてCa2+シグナルを阻害した遺伝子改変マウスを作製した。これら遺伝子改変マウスを用い、アストロサイトアセンブリの機能解析を進めることができた。また、小胞体内腔Ca2+プローブ(G-CEPIA1er)および新規ATPプローブを用いた機能解析も並行して進めている。このように第4年度の計画については、ほぼ予定通りの実績が得られており、順次論文発表を行う準備を進めている。
ほぼ予定通り進行しており、大幅な方針変更の必要はなく、以下の通り研究を進める。【戦略1】Ca2+シグナル動態解析 アストロサイトCa2+動態の生体内可視化法と、神経細胞および血管平滑筋細胞の生体内Ca2+可視化法と組み合わせて、感覚入力あるいは睡眠覚醒に伴う脳血流変化について解析を進める。アストロサイトのCa2+シグナルは、局所の神経活動に伴う血管弛緩以外の意義があると考えられ、本年度はこれを明らかにして論文発表を行う。【戦略2】細胞内Ca2+放出機構解析 小胞体内腔Ca2+プローブ(G-CEPIA1er)をウイルスベクターか遺伝子改変マウスを用いてアストロサイト選択的に発現させる。これを用い、アストロサイトのCa2+シグナル動態における細胞内Ca2+放出の寄与を明らかにする解析を進める。【戦略3】グリオトランスミッター可視化 新規ATPプローブを用いた生体内イメージングにより、大脳皮質における細胞外ATPシグナルを可視化する解析を進める。特に、大脳皮質拡延性抑制と脳梗塞に伴う細胞外ATP動態の比較解析を進め、病態とATP動態の関連を解析する。【戦略4】Ca2+シグナル阻害による摂動実験 IP3-Ca2+シグナルの選択的阻害により、グリアアセンブリにおけるIP3依存性成分の寄与を定量する。昨年度までに完成したIP3分解酵素(5ppase)をアストロサイト選択的に発現する遺伝子改変マウスを用い、戦略1の解析に応用する。領域内連携研究 アストロサイトのCa2+動態可視化に関連して、大木班との連携により、視覚野の情報処理におけるアストロサイトアセンブリの機能動態を解析する。支援班・小林憲太准教授(生理研)にウイルスベクターの作製を依頼し供給を受けており、今年度も依頼する予定にしている。公募研究・研究代表者・立川正憲准教授(東北大・薬)とアストロサイト・血管接合部のプロテオミックスについて共同研究を開始する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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