計画研究
グリア細胞は、非常に微細な突起構造を有し、この突起で周辺グリア細胞及び神経細胞とコミュニケーションを行っている。従って、本微細構造がインターフェースとして働いていることが予想される。本年は、1、インターフェースグリアにおけるグリア伝達物質放出の細胞種及び時間依存的にON/OFF出来る遺伝子改変動物(Tg)、2、 インターフェースグリアの機能を可視化する技術、の開発が、グリアアセンブリ動作原理の解明には、先ず必要であると考え、Tg作成、新規プローブの開発、及びこれらの最適化を行った。1、グリア伝達物質として中心的役割を果たすATPの開口放出を制御するVNUTを、アストロサイト及びミクログリア特異的にON/OFF/過剰発現(OE)できるTgを作成した。さらに、グリアのATP受容体として中心的な役割を果たすP2Y1受容体を細胞種特異的にON/OFF/OE出来るTgをも作成した。これらTg動物の機能解析を開始し、当該分子が細胞種特異的にON/OFF/OEされていることを確認することが出来た。2、インターフェースグリアのカルシウムを可視化するLck-GCaMP3の構築と、アストロサイト特異的GCaMP3発現マウスの作成に成功した。3、さらにグリアアセンブリを制御する分子をハイスループットで探索・同定する系として、ショウジョウバエ実験系を構築した。ショウジョウバエ脳にある5つのグリアサブタイプそれぞれについて、イメージング、遺伝子操作、トランスクリプトーム解析を行うためには、それぞれのグリアサブタイプ特異的なエンハンサー配列を得ることが必要である。そのために、約7,000のゲノム断片について成虫脳におけるエンハンサー活性を記録した公共の画像データーベースをスクリーニングして、候補となるエンハンサー配列を選定した。次にそれらのエンハンサー配列を持つエンハンサー挿入発現誘導系統を用いて、各グリアサブタイプに対するエンハンサー活性の特異性を解析した。
1: 当初の計画以上に進展している
グリアアセンブリ動作原理を明らかにするための遺伝子改変動物の作成が終了したこと、新規カルシウムプローブの開発に成功したこと、グリアアセンブリ機能解析に必須な高速共焦点顕微鏡の設置・最適化が終了した。またショウジョウバエを用いたハイスループットグリア機能解析系構築では、5つのグリアサブタイプについて、それぞれを特異的かつ独立に標識できるエンハンサー配列を同定し、それらの配列を持つGAL4エンハンサー挿入発現誘導系統ならびにLexAエンハンサー挿入発現誘導系統を得た。以上より、初年度は当初計画以上に計画が進んだと言える。
以下の3点を中心に研究を行う。1.グリア伝達の時空間制御を可能とする遺伝子改変動物(Tg)を用いた解析。2.グリア伝達の場であるインターフェースグリア機能を可視化できるプローブを用いた解析。3.本年度得られたエンハンサー配列を持つGAL4系統ならびにLexA系統を利用したグリアサブタイプ特異的な、カルシウムイメージング、トランスクリプトーム解析、人為的な活動のマニピュレーションを行うための方法の確立を行う。である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 4件)
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