計画研究
グリア細胞が、神経細胞、多種グリア細胞、血管等を含んで、グリアアセンブリとして機能する動作原理を、特にその細胞自律性と細胞間コミュニケーションの視点から解明することをめざし、以下を明らかとした。1. グリアアセンブリ機能を詳細に制御する技術として開発したFASTシステムにより、プリン作動性グリア伝達のON/OFFを制御した。これらを用い、グリアアセンブリが脳機能に与える影響を、特に病態時の機能に注目して解析し、脳卒中、物理的脳損傷(TBI)、神経障害性疼痛モデルにおいて、ミクログリアとアストロサイト間のプリン性作動性グリア伝達が、傷害の程度をダイレクトに規定することを見出した。2. グリアアセンブリ機能を正確に見る技術として開発してLckGCaMP3及びそのTgを用い、グリアアセンブリの微細突起機能をカルシウムイメージングとして解析した。特に病態時(脳卒中、てんかん)グリアアセンブリ機能可視化により、各種分子病態とリンクしたカルシウム応答を見出した。3. ショウジョウバエ成虫脳におけるグリアサブタイプの機能について、分子レベルから理解することを目的として、昨年度開発に成功したMACS(磁気細胞分離法)を用いた各グリアサブタイプごとの細胞単離技術を用いて、グリアサブタイプごとのトランスクリプトーム解析を行った。さらに、得られた結果をもとに、グリアサブタイプにおけるカルシウム応答を制御することが予想される分子に注目し、その機能を遺伝学的に解析を開始した。
1: 当初の計画以上に進展している
病態時のグリアアセンブリから、正常のグリアアセンブリの作用を明らかとする、という手法を用いて、「虚血耐性」誘導におけるアストロサイトアセンブリの動作原理を明らかとしたこと、「神経障害性疼痛」時のシナプス再編に関わるグリアアセンブリの動作原理を明らかにできたこと、さらに「TBI」モデルにおけるミクログリアーアストロサイトアセンブリ連関を明らかとすることができた。以上3点のプログレスより、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
グリアアセンブリのなかで、特にアストロサイトアセンブリに注目した研究を行って来た。各種病態モデルで見出したアストロサイトアセンブリ及びミクログリアアセンブリとの連関の現象を、分子メカニズムの視点から明らかとする。虚血耐性では、特にP2X7受容体とHIF1aの関連性を、またTBIモデルでは、P2Y1受容体のON/OFFとアストロサイト-ミクログリアアセンブリの機能連関について、さらに神経障害性疼痛では、mGluR5の発現メカニズムとアストロサイトアセンブリに関する検討を行う。また、ショウジョウバエ系を用いた研究では、各グリアサブタイプの中のさらに少数の細胞群での遺伝子発現誘導を実現するため、発現誘導のさらなるスクリーニングを行う。また、これまで知見のある成熟ショウジョウバエ成虫に加え、老齢成虫(羽化後30日以上)を用いて、老化によるグリア細胞構造変化を解析する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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