研究実績の概要 |
福山らは、電磁気刺激の効果をMRIを用いて全脳レベルで評価することに世界で初めて成功した(Abe M, Fukuyama H, Mima T. PNAS 2014)。電磁気刺激は、脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患のみならず、うつ病、統合失調症による幻聴、強迫性障害などの精神疾患の最新の治療法として注目されているものの、その作用機序についてはわかっておらず、その解明が待たれていた。本研究では、オリゴデンドロサイトに関連した白質線維の非侵襲的評価を可能とする技術である拡散強調画像法を応用することで、電磁気刺激は刺激部位を含む複数の脳領域が共同してその効果を持続させていることを明らかにした。このようなニューロン・グリアに関連したネットワーク解析法をさらに向上させることで、精神疾患の病態解明のみならず治療介入における重要な評価手法となることが期待される。本研究成果は、京都大学のホームページ上より一般に公開され(http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/140311_1.htm)、複数のニュース記事として取り上げられるなど本課題において顕著な業績の1つである。 分担者の植木らは、常磁性体(Gd3+)とMRI核種(F)で基質ペプチドの両端を標識したMRIスイッチング・プローブを合成し、それに狂犬病ウィルス糖タンパクを連結することにより、血液脳関門透過性を持つ脳内プロテアーゼ動態のMRIプローブを創製した。これまでに統合失調症などの精神神経疾患患者脳で、その発症初段階にミクログリアの毒性転化(Suzuki K et al., JAMA Psychiatry 2013)と、それを惹起するADAM10などの病態プロテアーゼの活性化も確認されており、本プローブはMRIによる統合失調症などの早期診断に有用である
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