研究領域 | グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態 |
研究課題/領域番号 |
25117009
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
高坂 新一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所, 名誉所長 (50112686)
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研究分担者 |
内野 茂夫 帝京大学, 理工学部, 教授 (30392434)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳発達 / ニューロン / ミクログリア / マーモセット |
研究実績の概要 |
本研究では、脳発達期における明確なシナプス数の変動が観察されるマーモセットおよび分子生物学的ハンドリングが容易であるマウスを用いて、機能的な神経回路形成におけるミクログリアの機能の解明を目的としている。 マウスを用いた解析においては、分子発現解析についてプライマーアレイや独自で作製したプライマーセットを用いてミクログリア機能分子約300種類の発現変動を定量PCRで解析し、脳発達過程の発現プロファイルを作成した。特にシナプス形成期に発現が変動する分子の中で、シナプス情報伝達に関わることが推定される分子であるrantes(CCL5)に着目し詳細な発現解析を行った。大脳皮質および海馬において、rantesの発現は生後2週齢から3週齢にかけて上昇するがその後減少、一方、胎児期のバルプロ酸(VPA)の曝露は生後の脳発達における興奮性のシナプス情報伝達に異常を惹起することが報告されている。そこでVPAによる病態マウスにおけるrantesの発現を検討した結果、野生型マウスでは発現が減少する生後4週齢において有意な発現亢進がみられ、特に海馬においては雌雄ともにコントロールと比べ約10倍の発現亢進が見られた。 マーモセットを用いた解析においては、本年度は生後1.5、3、6ヶ月齢のマーモセットを用いて、大脳皮質12野の神経細胞樹状突起スパインの密度を解析したところ、生後3ヶ月齢でピークに達し、6ヶ月齢で減少することが確認された。ミクログリアの皮質単位カラム内密度は生後2-3ヶ月齢でピークに達し、生後6ヶ月齢及び成体では減少していた。形態学的には生後3ヶ月齢の大脳皮質ではミクログリアの突起の先端が特徴的なブートン様構造のものが多く、そこから細い突起が伸びてスパインに触れる様子が観察された。ブートン様構造のミクログリア突起と接するスパイン数も生後3ヶ月齢でピークに達し生後6ヶ月齢では減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーモセットおよびマウスを用い脳発達期に見らられるシナプスの刈り込み現象におけるグリア細胞、特にミクログリアの関与を明らかにすることを目標としているが、特にマーモセットではこのシナプスの刈り込みが生後3カ月以降でシナプスが減少することを明らかにした。また、マウスでも類似の変化が生後3週目前後で観察された。今後この3カ月あるいは3週間前後で、ミクログリアの形態変化や遺伝子変動を調べることになり、今回の刈り込み時期が決定されたことは大きな進展である。 一方、マウスのプロイマーアレイによる解析ではグルタミン酸放出を促進することが知られているranted(CCL5)が生後3週目まで発現上昇し、その後減少することが明らかになったことも進展の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
マウスのプライマーアレイによる解析が概ね終了したことから、今後はマウスで興味ある変動を示したCCL5を含めマーモセットを用いた研究を主体にミクログリアとシナプス切り込みに関わる分子の機能解析を行いたいと考えている。具体的には、マイクロアレイによって注目された分子に関し、逆行性ウィルスベクターを用いたニューロンでの強制発現実験やニューロン・ミクログリア共培養系を用いて解析する計画である。
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