計画研究
統合失調症や自閉スペクトラム症の病態に関与することが想定される6つのグリア関連遺伝子について、次世代シーケンサー(Ion torrent)を用いたシーケンス解析を実施し、患者572名のシーケンスを終了した。同定した一塩基変異の中で、両疾患の病態に関与する変異を同定するために、1)頻度が稀(1%未満)、2)各種データベースに収載されていない、3)Polypohen-2やSIFTを用いたin silico解析によりタンパク質機能変化が予想される、変異を抽出した。抽出された変異の中で強く病態に関与する可能性が示唆された変異については、独立サンプル(患者1700名、健常者2000名)を用いた関連解析を実施した。その結果、RTN4RのR292Hが統合失調症と有意な関連を示した。加えて、九州大学神庭、藤田保健衛生大学池田と共同して、統合失調症や双極性障害のゲノムサンプル収集を進め、アレイCGHを用いたゲノム解析を実施し、病的意義を有するCNVを同定した。さらに、グリア関連遺伝子のゲノム変異から精神疾患の病態を明らかにするため、九州大学神庭と共同で昨年度同定したAIF1(Iba1)欠失をもつ双極性障害患者から血液を得てiPS細胞の樹立を行った。また、名大においてミクログリア様細胞(iMG)誘導を可能とするため九州大学神庭研においてiMG誘導の見学および技術習得を行った。平行して、ASTN2欠失をもつ統合失調症患者から血液を得てiPS樹立も進めた。
2: おおむね順調に進展している
グリア関連遺伝子のシークエンス解析とそれに続く関連解析から、統合失調症の発症に比較的強い影響を及ぼしうる頻度の稀な一塩基変異を同定し、グリア関連遺伝子が統合失調症の病因に関与することを示唆する知見を得た。さらにグリア関連遺伝子にゲノム変異を持つ精神疾患患者からiPS細胞の樹立を進めた。以上から、現時点では概ね順調に進展していると考えられる。
グリア関連遺伝子で同定した一塩基変異の機能的意義を詳細に検討し、統合失調症病態におけるグリアの関与を明確化する。さらに、同定したゲノム変異を有する患者の詳細な臨床情報を取得し、ゲノム変異と疾患との関連を検討する。さらに、九州大学神庭と共同してiPS細胞あるいはiMGを樹立・解析し、精神疾患におけるグリアアセンブリの機能不全を明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 5件)
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