計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
統合失調症におけるミクログリアを介した病理的な機構を解明するために、我々の班では、向精神薬を用いた基礎的な研究と、ヒトを対象としたトランスレーショナル研究の二本柱で研究を推進している。本年度は、まず、齧歯類由来のミクログリアとオリゴデンドロサイトとの共培養実験によって、ミクログリア活性化抑制作用があり抗精神病効果が見出されているミノサイクリンや一部の抗精神病薬に、活性化ミクログリアの制御を介したオリゴデンドロサイト保護作用を見出し、国際学術誌に報告した(Seki et al. Schizophrenia Research 2013)。統合失調症を研究対象とするからには、最終的にヒトにおける病理解明が不可欠である。従来の研究では、ヒトの脳内の神経やグリアを直接的に解析することは倫理的・技術的な問題からほぼ不可能であった。我々は、この限界を補うべく、ヒトの体細胞(血液や皮膚繊維芽細胞など)から、神経やグリアを誘導し、こうして誘導された細胞を解析することで患者の脳内のin vitroレベルの異常を検出するシステムを構築しつつある。本年度は、ヒト血液から各種誘導因子の導入により2週間でミクログリア様細胞を作製する技術を開発し、特許申請した(加藤隆弘, 扇谷昌宏, 神庭重信: 特願: 2014-002129)。来年度以降の統合失調症の病態解明に強力なツールとなることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、齧歯類由来のミクログリアxオリゴデンドロサイト共培養システムを開発し、ミクログリア活性化抑制がオリゴデンドロサイトを保護する可能性を見出したこと、および、ヒトの体細胞から直接誘導ミクログリア様細胞作製法開発に成功したことから、研究は概ね順調に進展している。こうした成果を来年度以降の研究に活かしてゆきたい所存である。
引き続き、(1)齧歯類由来のグリア細胞を用いたin vitro研究、(2)齧歯類モデル動物を用いたin vivo研究、(3)ヒト体細胞由来の誘導ミクログリア細胞等を用いたトランスレーショナル研究を推進してゆく。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)
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