研究領域 | グリアアセンブリによる脳機能発現の制御と病態 |
研究課題/領域番号 |
25117012
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183305)
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研究分担者 |
松下 拓也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00533001)
山崎 亮 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10467946)
松瀬 大 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70596395)
真崎 勝久 九州大学, 大学病院, 助教 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | グリア細胞 / ミクログリア / アストロサイト / コネキシン / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
1)多発性硬化症(MS)でアストロサイトの血管周囲足突起に発現する monocarboxylate transporter 4 (MCT4)の急性期病変での脱落を発見した。血管内皮のglucose transporter 1 (GLUT1)や MCT1は保持されており、グリア細胞を介した栄養供給経路に障害がある可能性を見出した。 2)気管支喘息モデルマウスは著明なアロディニア(異痛症)とミクログリア・アストログリアの活性化を呈することを発見した。endothelin-1の受容体EDNRBがアストログリアに高発現し、その選択的阻害薬BQ-788によりグリア炎症の消失とともにアロディニアは改善した。アトピー素因マウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導したところ、発症が早くなり重症化し、アストロサイトが活性化した。アトピーではアストロサイトの活性化をにより神経炎症が増悪すると考えた。 3)Connexin (Cx) 30 knockout (KO)マウスにmethyl-phenyl-tetrahydropyridine (MPTP)を投与すると、野生型と比較し自発運動が顕著に低下し、ドパミンニューロン障害が増悪した。本マウスでは、アストロサイトの活性低下、アストロサイトのMCT4の分布異常と発現低下、GLUT1の発現低下を認め、Cx30の欠損により様々なアストロサイト機能異常が誘導されることを発見した。Tamoxifen によりinducible なアストロサイト特異的Cx43cKO マウス、オリゴデンドロサイトのCx47 flox/flox マウス、Cx32 flox/flox マウスを作成した。 4)MS生体試料バンクを用いたgenome-wide association studyにより、発症年齢とNeurotrophic Tyrosine Kinase Receptor Type 2、MS severity scoreとtransglutaminase 2、leptin、lipoprotein aが関連することを見出した。 5)筋萎縮性側索硬化症モデルのSuperoxide dismutase 1変異マウス脊髄では、オリゴデンドロサイトのCx32やCx47が脱落、内在化することを初めて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示すように、各項目について着実に成果を挙げている。
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今後の研究の推進方策 |
1)グルコース・乳酸トランスポーターの解析を、視神経脊髄炎やtumefactive multiple sclerosis、Baló病の剖検標本や動物モデルで進める。 2)アトピー素因マウスのアストロサイトを標的とした治療(BQ-788)が、他の疾患モデルマウスにおいても奏功するかを様々なモデルマウスで検討する。アトピー素因マウスのアストロサイト活性化の分子機構解明のため、GFAP-GFPマウスからセルソーターでアストロサイトを抽出し解析する。 3) Cx30 KO マウスでのMPTP 投与実験で、脳エネルギー代謝物をin vivo で可視化できるMALDI-MS imaging解析を実施する。Inducible なアストロサイト特異的Cx43cKO マウスでEAEを解析する。Cx30 KO マウスとアストロサイト特異的Cx43cKO マウスを交配させ、inducible なアストロサイト特異的Cx30/Cx43二重欠損マウスを作成する。また、Cx47 flox/flox マウス、Cx32 flox/flox マウスとPLP-CreERマウスを交配し、inducible なオリゴデンドロサイト特異的Cx47 cKOマウス、Cx32 cKOマウスの樹立を行い、EAEを解析する。 4) Zinc Finger and BTB Domain Containing 20 (ZBTB20)が日本人MSの新たなリスク遺伝子であることを見出したので、ZBTB20遺伝子多型とMSとの相関について独立した検体を用いた追試、患者及び健常者末梢血中から誘導したマクロファージにおける同遺伝子多型間でのサイトカイン・ケモカイン発現やTLR反応後カスケードの分子発現の比較を行い、病態における同遺伝子の影響を明らかにする。さらにアストロサイトの培養系を用いて、TLRを介した炎症性サイトカイン産生へのZBTB20の影響を、siRNAを導入することで明らかにする。5) 筋萎縮性側索硬化症モデルのSuperoxide dismutase 1変異マウスでは、Cxの裏打ち蛋白であるZonula Occludens-1の発現変化が、Cx脱落や内在化に関連している所見を得たので、さらに解析を進める。
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