計画研究
渡辺は、マウスの共感性について検討した。①餌の不公平嫌悪について、体表温指標ではストレス誘発性高体温が確認されたが、行動指標では餌を摂取しているケージメイトへの選好がみられた。これらの同時検討を行った結果、両者が同時生起している興味深いデータが得られた。②マウスの援助行動を複数条件で検討した。ラットの先行研究と異なり、マウスは明白な援助行動を示さなかった。③薬物投与個体の強化効果はハロペリドールによって拮抗されなかったため、オピエート系の関与が考えられる。④オキシトシンが雌間の他個体選好を促進する効果があることを見出した。⑤自閉症モデルBTBRマウスについて、視力が良いこと、優劣順位が不安定であること、刺激間の時間的予測を要する学習に障害があることを示唆する結果を得つつある。藤田は、霊長類とイヌの共感性関連行動を分析した。フサオマキザルとリスザルを対象に、同種個体/異種個体への給餌者に対する選好を調べた。その結果、フサオマキザルでのみ同種個体に給餌した個体への選好傾向がみられた。フサオマキザルやイヌで既に見出した他者に冷淡な演技者の回避という第三者評価に加え、リスザルでは他者に親切な者への好みが示されたことになる。これとは対照的に、イヌは他者への援助者に対する選好は示さなかった。伊澤は、カラスの共感性関連行動について調べた。昨年度まで、若鳥の異性・同性個体間では、給餌や羽づくろいなど利他行動に互恵性がないことを見出したが、本年度は、つがい個体間では互恵性があることを見出した。これは、社会関係・発達と利他行動に随伴性があることを示唆する。若鳥オス間の相互羽づくろいが第三者メスの存在によって促進されることを支持するデータが一部得られた。2個体間の優劣関係形成に伴って個体間距離が伸長することを見出し、情動生理反応の検討に向けた心電図計測と自律神経系薬理作用の評価系を立ち上げた。
2: おおむね順調に進展している
個別の実験操作内容については計画からの変更や修正が一部あったものの、検討事項についてはおおむね計画通りに進んでいる。進展に伴って計画以上の新たな検討も進んでおり、自閉症モデルマウスの社会行動の検討による発達班との接合の試みや、海外機関との共同研究による類縁種(デグー、トンケアンマカク、オナガなど)との比較研究についても結果が得られつつある。
マウスが援助行動を示さないという点は継続検討し、ラットの先行研究との違いをもたらす要因を明らかにする。薬物投与個体の強化効果については、オピエート系の関与の可能性がでてきたので、ナロキソンによる拮抗を検討し、薬理機構を明らかにする。BTBRマウスの視力、優劣安定性についてもデータを追加する。デグーの父性に着目した協力行動についても海外機関との連携研究として継続実施する。ハトの援助行動については未検討であるため、オペラントによる援助課題実験を行う。他者への協力・非協力性にもとづく第三者評価について、ネコやデグーでも検討を行うのと同時に、海外他機関との連携によって、優劣順位の強いトンケアンマカクにも拡張検討する。カラスのオス若鳥間の利他的羽づくろいが第三者メスの存在によって促進されるかを継続検討しつつ、メス側がオスの利他行動を選好するか動画再生実験によって検討する。カラスの援助行動は未検討であるため、霊長類の先行研究と比較可能なテーブル協力課題を導入し、海外研究機関のカラス研究チームと連携によってカラス種間比較を進める。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 1件、 査読あり 22件、 謝辞記載あり 21件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 11件) 図書 (5件)
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