計画研究
1)共感性遺伝子の網羅的解析:ニワトリの情動伝染に関する行動指標としての評価モデルを作成した。具体的には、一羽の雛の周囲を複数のモニターで取り囲み、そのモニター上に投影された他個体(集団)の動きとの連動性・同調性に、明瞭な個体差が生じることを確認した。また個体が感じる恐怖の程度を調べるための行動実験である緊張性不動を測定した。2)共感性の個体差を生み出すゲノム基盤:ニホンザルの毛づくろい観察データとオキシトシン受容体の多型との関連を見いだした。またモノアミンオキシダーゼとアンドロゲン受容体の遺伝子の多様性の程度や対立遺伝子頻度が、類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)の種間で大きく異なることがわかり、社会行動の種間差に関連する可能性が示唆された。麻薬探知犬において、オキシトシン受容体遺伝子に、合否と関連する1塩基多型部位を見いだした。また、伴侶犬の共感性レベルの行動学的評価をおこなった結果、原始的犬種よりも欧米純粋犬種の方がヒトに対する視線接触が長いこと、イヌがヒトの「無表情・無反応」に対して柔軟に行動を変化させることを明らかにした。3)共感性の進化を支える遺伝的基盤:ニシゴリラ、ヒガシゴリラ、チンパンジー、ニホンザルにおいて、マイクロサテライト領域を用いて、血縁構造や遺伝的類似度の解析を行なった。野生のニシゴリラのオトナ間での食物分配を初めて報告し、血縁関係のないと思われるオトナメス間では食物分配が起こらないことを明らかにした。ヒガシゴリラの遺伝構造の解析では、ニシゴリラと異なり、コドモが頻繁に群れを移籍することが確認された。また、ニホンザルで、遺伝的類似度が行動に与える影響について解析し、新奇食物への反応は遺伝的類似度が高いほど、似ていることがわかった。
1: 当初の計画以上に進展している
1)遺伝子の網羅的解析については、鳥類の行動指標を確立し、ゲノム解析試料を採取したので、関連解析が可能になった。2)またオキシトシン受容体をはじめとする多数の候補遺伝子について、霊長類やイヌなどで多様性の解析、種間比較を行い、行動との関連を見いだした。3)霊長類各種で遺伝構造を解明し、共感性行動と比較した。これらの成果は論文発表または投稿中である。当初計画以上に、多くの動物種や遺伝子において、成果を得ることができている。
サラブレッド馬の馴致難易度評定値や、ネコの性格評定、マーモセットの性格評定を実施しており、これらの種でオキシトシン受容体やバソプレシン受容体などの候補遺伝子の多型を見いだしている。これらについて、多数個体のデータを用いて関連解析を行う。またこれら遺伝子の種間差は社会進化に影響した可能性が考えられるため、多様な社会構成を持つ食肉目でも、解析遺伝子を増やして考察を深める予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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