個体から個体へと恐怖や痛み等の負の情動が伝わる「情動伝染」が進化する条件は、当該個体間が似通った環境を共有する場合であり、個体間の血縁の大小とは関係が薄いことを見出した。また情動伝染の進化はグループサイズの増大に先んじて起きたという理論的予測を得た。「他者に協力されたから自分も第三者に協力する」という正の共感性に基づく協力は、そのような情動状態が長続きしないいわば「冷めやすい共感性」である時に限って適応進化可能であることが分かった。またヒトの持つ同調性は、時として集合知の劣化をもたらすが、向社会性を促進し得ることを見出した。
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