共感性の神経回路基盤の解明を目指し,一連の共感行動に関連した神経活動を同定する目的で,行動を小さなピースに分解し,同行動ピースと関連する神経活動の同定を試みた.「共感行動」と一般に言われる一連の行動を小さなモーションに分解するために,コンピュータビジョンを用いた動物の特徴量抽出を自動的,客観的に行うことを試み,得られた数値データを統計学的にカテゴリー分けを行った.共感行動の中でも最もプリミティブである「情動伝染」を手はじめに分割を試みた際には,本研究課題により開発したシステムにより発信個体と受信個体のそれぞれの行動が影響し合う様が観察できた. 更により多様な行動が含まれるオープンフィールドにおいて見られる,行動の解析を行うことで行動解析の一般化を試みた.特徴量としてピクセル・ベースのCHLACを用い,オープンフィールド内における動物行動の分類を行ったが,この際,共感性などの社会行動が診断基準の一つとされる自閉症のモデル動物と行動比較を行うことで,健常行動の理解につなげることを試みた.まずは通常ビデオカメラで得られるだけの情報を収集し,これを認知カテゴリ(歩行,餌を食べる,グルーミング等)として分類することから始めた.実際にはビデオレートで撮影したビデオデータをCHLACで解析を行ったので,3フレーム(約10 ms)を一単位として行動解析を行い,これを二次カテゴリーにクラス分けすることで行った.こうすることにより一度小さな「手を動かす」などのモーションに分解し,その集合としての認知行動という行動のありようが可視化できるようになった. 深度センサーの導入も試みたが,マウスやラットといった四足動物の行動理解には,一般的なカメラを用いた特徴量抽出に於いても比較的多くの情報が得られることが明らかとなったため,今回は一般カメラを用いて行うこととした.
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