研究実績の概要 |
視覚系において光信号の短時間解析が必須であるような課題遂行の特性が明らかになった。フリッカー視覚刺激の知覚的持続時間が、特定の周波数帯域が含まれる際に伸長することを見出し、うなり周波数モデルに神経回路の引き込み現象を追加したモデルで説明できることをシミュレーションで立証した (Hashimoto & Yotsumoto, 2015)。追跡眼球運動をしながら、眼球運動と同一方向と反対方向の刺激を網膜上で同じ速さになるように加算して同時呈示すると、反対方向の刺激の検出が相対的に促進されることを見出した (Terao, Murakami & Nishida, 2015, J. Vis.)。検出すべき刺激の方位と同方位の刺激が同一線上に同時に並ぶことで促進されるコントラスト検出が、周辺刺激を同心円にして方位を不可視にしたり、マスキングして周辺刺激自体を不可視にしたりしてもなお促進効果をもつことがわかった (Hayashi & Murakami, 2015, J. Vis.)。盲点内部に光を呈示しても不可視であるが、盲点外部に呈示した光照射に応じて起こる短潜時の瞳孔対光反射が、盲点内部に光を同時タイミングで呈示した場合に増強することを発見し、何らかの光受容機構が存在することを立証した (Miyamoto & Murakami, 2015, Sci. Rep.)。また、脳回路の時間的変遷に関して成果が得られた。高齢群において視覚の知覚学習に伴い白質に構造的変化が生じることが、脳画像の拡散テンソル解析でわかった (Yotsumoto et al., 2014, Nat. Commun.)。初期視覚領野の面積が加齢に伴い減少し、領野の面積と視覚の知覚学習能力に相関があることがわかった (Chang, Yotsumoto et al., 2015, Neurobiol. Aging)。
|